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いちばん男にウケる洋服、それは「コスプレ」ではないだろうか

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CanCam

(「CanCam2013年08月号」小学館)

  読者モデルを表紙に抜擢したことがにわかに話題となっている『CanCam』8月号。今回の試みは「CanCamの歴史上、大変稀なこと」だそうです。これまで同誌では、エビちゃんや山田優や押切もえといった「スターモデル」に憧れを抱かせて、読者の購買意欲をかきたててきたわけですが、先月号の「ぷに子」といい、読モの表紙登用といい、庶民派路線に転向しつつあるようです。おまけに今月は「『最低♡女子』じゃダメですか!?」という謎企画もスタート。「最低女子」と書いて、「ずぼカワ」と読む(読めないだろう)。すなわち「ずぼらだけどカワイイ女子」だそうで、【日本の“かわいい”のセンターであるCanCam】の中でも、“かわいい・オブ・かわいい”といえる5人の人気読者モデルが「最低女子」としてユニットを結成。次号から読者代表としてあらゆる企画で活躍していくとのことです。

 カワイイものが好きだし外出時はきちんと着飾るけれど、オフの時間は完璧にかわいいわけじゃない。自宅ではゴロゴロしていたり、実は汚部屋住人だったり、お風呂ギライだったり、バッグの中身がグチャグチャだったり……という女子を「最低女子(ずぼカワ)」と名付けた『CanCam』。いや、エビちゃんだって家ではすっぴんで前髪クリップでとめてスエット着てゴロゴロしてると思いますし、これは多くの女性にとってあまりにもフツーのことだと思うのですが、いまさら「超絶きゃわいいアノ子だって、24時間完璧なワケじゃないない☆」なんて言わなきゃいけないのか? というか、可愛い子がズボラなら「ズボかわ」かもしれないが、可愛くない子は……(以下自粛)。それにちょっとだらしない行動をしたぐらいで「最低女子」っていうのも言いすぎ。どんだけ完璧を目指してるんだ君たちは。それも誰のために? そして「ズボかわ」って、●●●がズボズボな女性を想起させてなんだか卑猥です!

仮想男子に従っても、モテないものはモテない

 さて、今回は『CanCam』編集部が想定する男子目線のキモさにフォーカスを置いてお話しさせていただければと思います。この手のファッション誌において「可愛く思われたい、そして可愛いと仲間内で言い合うための衣服」を基軸として構成される記事には、この仮想男子目線がつきものです。たとえば「こんな仕草に男子はキュンとする」とか「男子はこんなファッションで恋に落ちる」とか。私がクライアントなら「このデータ、どこから取ってきたんですか? ちゃんと信頼できる数字なの?」と質問して冷や汗かかせたくなるような、信じられない男子目線が毎号紙面を踊っていることが気になって仕方がないのです。

 まず、「脱いだその瞬間、ドラマが始まる♥ 真夏の『ノースリーブ』劇場」での仮想男子目線が、いきなりとんでもない。記事によれば、これからの季節、女性が仕事中にはおっていたジャケットやカーディガンを脱いで「ふいに」ノースリーブになったその瞬間を目撃した男性は一瞬で恋に落ちてしまうんだとか。誌面では、セオリー通りにオフィスの先輩・後輩・同期・毎日すれ違う女の子(これ単なる他人じゃん)、それぞれのパターンで、真夏のノースリーブ劇場が展開されています。

 しかし、いまどきノースリーブぐらいで恋に落ちるって、どんだけ刺激に弱い男性なのか……。ノースリーブが日本に流入したのは1950年代だそうですが(これと同時に日本でも腋毛を剃る習慣が広まったんだって。出典はWikipediaですが……)、およそ60年前の日本男児でも、「恋落ち」はなかったのでは。

 リアル男性目線から言わせていただくならば「キレイなコのノースリーブは、良いかもしれないけど、そうじゃなかったら、別に見ないよね」という身も蓋もない話になってしまうし、もっと個人的な意見を言うと「そうじゃない」、つまり「見た目的にあまりよろしくない女性」のノースリーブって扱いに困るんですよ……。そう、悪い意味で目のやり場に困ってしまう、というか……。特に上司の女性とかだとアレは結構キッツい。さすがに上司世代の女性は『CanCam』を真に受けてノースリーブを着倒したりはしないでしょうが、もう少し上の世代向けの女性誌でも似たようなことをやられると困ります。どうか若者を誘惑しないでください(見たくない……)。

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カエターノ・武野・コインブラ

80年代生まれ。福島県出身のライター。

@CaetanoTCoimbra