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しつこいナンパや痴漢被害を「言えなくする」ミソジニーとミサンドリー

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柴田英里

(C)柴田英里

 今年も残すところあと1カ月をきり、忘年会シーズンがやってきましたね。夜遅くまでお酒を飲むことも、12月の華やかな街並みも好きなのですが、困ったことにこのシーズン、酔っぱらいによるナンパや痴漢も増える気がします。

 酔っぱらって気分良く帰る車中や路上でうざいナンパや痴漢などに出くわすと、その日1日の楽しい記憶までもが台無しになってしまいそうになるので、本当に苦々しいです。

 男性から女性へのしつこいナンパや痴漢の被害などは、容姿の美醜などを問わず確実にたくさんあります。

 ですが、被害に対する憤りなどを吐露することが、「モテ自慢」だとか「ミサンドリー(男性憎悪)をまき散らさないで欲しい」とか「そんな男ばかりじゃない」とか「ナンパや痴漢が嫌じゃない女性だっているよね」という、曲解や被害妄想ときどきトンデモ理論経由でミソジニー(女性憎悪)に生成変化してしまうこともままあるのが現状。そうした不毛な事態を防ぐために、しつこいナンパや痴漢などへの怒りや憤りを無理矢理飲み込む女性も数多くいるはずです。

 そしてそれによって、世の大半を占めるしつこいナンパや痴漢を「しない」男性たちは、「しつこいナンパや痴漢なんて現実にはほとんどないでしょ」という誤った認識を持ってしまう確率が増えるという、なんとも悪循環な事態が続いているように思います。

 かく言う私は、普段、1人で夜歩く時などは、非モテ系派手ファッション(これはいつもですが)&早歩きかつ殺意をまき散らすような面構え(人に声をかけられるのが嫌なのと、だらだら歩くのが好きではないので)なので、あまり声をかけられることはありませんが、それでもこの時期の終電間際の時間帯などは嫌な思いをすることが多いです。

 ここ1週間ほどで、私が遭遇した体験と対処を紹介します。

● 「セックスセックス」とつぶやきながら後をつけられる。(コンビニに入り店員に相談したら逃げた)

● 「一緒に飲みに行きましょうよー」と言いながら、私が乗車したタクシーに乗り込もうとしてくる。(舌打ち+メンチをきる+「キメぇんだよ」とつぶやく)

● 信号待ちをしていたら、スケートボードで疾走する男性に痴漢されそうになったので、避けたら「避けんなブス、死ねよ」と叫ばれる。(周りに人がいなかったので、自分の危険を考えて言い返したりなどはできなかった)

●駅改札付近で「飲みに行きましょうよー荷物持ちますからー」と荷物に手を触れられる。(舌打ち+メンチをきる+「駅員呼びますよ」で着いてこなくなった)

 ちなみに、2番目と4番目はサラリーマン風のスーツの男性で、近くに連れと思われる数人のスーツの男性たちがいました。

 私の対処は、以前は、

●相手を無視しながら近くの助けを求めることが可能な人に助けを求める。

●付近にいる人間に助けが見込めそうにないor普通の人では対処できないくらいに相手がヤバそうな場合は逃げる。

 のどちらかでしたが、最近は、無視して立ち去れない程度には怒りが溜まっているので、精神衛生のことを考えて、明らかにヤバい男以外には一言二言は言い返すようにしています。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」