
胎内記憶をモチーフとした映画まで。『うまれる』公式HP
精子、卵子にも記憶がある。そう記述して、かの有名(?)な日本トンデモ本大賞2009にもノミネートされた『胎内記憶―命の起源にトラウマが潜んでいる』(角川SSC新書)。最近ではこの分野に興味を持つ人が増えているようで、雑誌などで取り上げると大きな反響があるそうです。
そもそも胎内記憶とは? ドキュメンタリー映画『うまれる』(豪田トモ監督。2010年)の公式HPでは、以下のように説明されています。
“胎内記憶とは「母親のお腹の中にいたときの記憶」のこと。細かくは、陣痛から誕生までの「誕生記憶」、お腹に来る以前の「中間生記憶」などにも分けられますが、一般的には「産まれる前の記憶」を総括して「胎内記憶」と呼んでいるようです。”
前出の『胎内記憶』の著者である池川明医師は、言わずと知れた胎内記憶研究の第一人者。本によると、子供の口から語られているのは「ぐるぐる回って泳いでいた」「ひもでつながれていた」などの胎内記憶です。精子記憶の証言では「たくさんの仲間がいて競争し、自分が勝った」なんてものも。
あまりにもそのまんま過ぎて、逆に嘘っぽい。出産時の「首がひっぱられて苦しかった」なんて記憶もあるようですが、お母さんの絶叫や血の感触などの記憶があったら、どう考えてもトラウマになりそうだわー。ところが映画や池川医師の著作に対する感想を見てみると、「命って素晴らしい!」「暖かい気持ちになりました」というものが多いようで、正気か! と心底驚きです。
流産で消えた命は…
池川医師周辺では胎内記憶調査から「どの子供も親を選んでやってくる」という結論が出ているようなのですが、〈子供は親を選べない〉からこその問題は? 欲しくても産めない夫婦は〈選ばれない〉の? 〈精子・卵子の記憶〉が本当にあるとしたら、体外受精の場合は? 卵子や受精卵を凍結する過程を経て生まれた子供には、「マジ凍えたわー」とか言われちゃうワケ? 単純に、疑問しか湧き出てこないけどなあ。
さらに次の見解には、西野カナばりに震えました。「お母さん大学」なるサイトに掲載されている池川医師のQ&Aコーナーに掲載されていたものです。流産した女性からの質問に対し「お母さんは本当はワガママな人。がんばってもどうにもならないことを教えてくれるために、赤ちゃんは学びのチャンスを与えに来てくれた」という、たいわ士※なる人の意見を紹介しているのです。
※たいわ士=とは、宗教とは無関係の「愛のメッセンジャー」だそうです(意味が分からん)。赤ちゃんの声を聞く「胎話」や体の声を聞く「体話」など、すべての存在の通訳だといいます。育成講座も行われている模様。/
こ・れ・は・ひ・ど・い! ちなみに障害を持って生まれた子供は、〈(親の)魂の成長のため〉と解釈されているようです。虐待も同様です。この理屈を追っていくと、子供の責任が重すぎる。しかも胎内記憶は〈前世〉も含まれるらしいので、業までガッツリ背負わされておりますよ……! 池川医師は「親は子どもに〈生まれてきてよかった〉という実感を与える必要がある」といいますが、こんなこと聞かされたらむしろ逆効果では。西野カナ病が再発しそう。