暗いイメージを拭い去れない刑務所のなかに、そうした明るい一面があるのは良いことだと思います。しかし、塀の外には体を売って日銭を稼ぎ、路上で寝泊まりする他ない、ハイリスクな生活を送る女性たちもいるわけです。刑務所のなかで希望を見出す“塀の内の女性たち”と、刑務所の外で息苦しい絶望に苛まれながら生きる女性たちの様子を対比すると、不条理を感じてしまいます。
一人の受刑者が1年を刑務所で過ごすコストを計算すると270万円ほど。その多くが税金で賄われていることを考えると、最貧困女子のなかには、犯罪者以下の扱いを受けている人もいるかもしれない……そんなふうに思えてなりません。年収200万にも満たない女性たちはそれこそ塀の外に大勢ひしめいているのですから。
女性受刑者の罪状で一番大きな割合を占めるのは「覚せい剤取締法違反」というのにも驚き。他にも女性死刑囚の歴史や女性刑務官の一日などに迫っていて大変読み応えがあり、20年以上にわたって日本各地の刑務所を取材してきた著者らしい密度です。しかし、著者である写真家・作家の外山ひとみは今年になって急逝。思いがけず、この一冊が著者の仕事の集大成となってしまった模様です。著者の女性観には意見を挟みたい部分があるものの、合掌。
■カエターノ・武野・コインブラ /80年代生まれ。福島県出身。日本のインターネット黎明期より日記サイト・ブログを運営し、とくに有名になることなく、現職(営業系)。本業では、自社商品の販売促進や販売データ分析に従事している。
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