当時、検証用の肥後ずいきを買ったネットショップ「肥後ずいき専門店」をのぞいてみたら、変わらず元気に営業中でした。
「ズイキ職人が不足しており入手が難しくなっております」「肥後ずいきの原材料収穫及び生産を開始しました」など、独特の情報であふれていて、見ているだけでも趣きを感じます。肥後ずいきとは、ハスイモの葉を乾燥させたものを編みこんで作った工芸品。葉にサポニンという成分がふくまれていて、これが性器に付着するとムズムズ&ムラムラ……つまり性欲が刺激されるという代物です。このムズムズを収めるために「早く挿入して~♡」となり、そして快感のあまり〈随喜(ずいき)の涙〉を流すというわけです。
これぞオーガニック・ラブグッズ! ということで、届いたものを手にしたときはその軽さに驚きましたね。ほんとうに乾燥した葉だけでできているので、あっけないぐらい軽いんですよ。そして、凝った意匠に目を奪われました。緊縛を思わせる美しさがあり、江戸時代の人々の美意識を感じます。参勤交代のときにお土産として持参し、将軍家への献上品としたという逸話ともあいまって、たいへんありがたいものに見えてきます。
実際に使ってみての感想は同書に詳しくあります。軽妙な文章で書かれているので、おもしろおかしく読んでいただけると思います。よってここでは詳細を省きますが、「性欲は体ではなく脳からわき上がる」ということを実感しました。当たり前といえば当たり前ですが、性器がムズムズしても脳の性欲スイッチがオンになっていないと、虫に刺されて「かゆいな」と思っているのと大差ないのです。だからといって肥後ずいきがまったく役立たずというわけではありません。だとしたら、世紀を超えて受け継がれてはいないでしょう。昔もいまも〈道具は道具〉。それをどう使えばふたりのムードを盛り上がられるか、ということに尽きるのです。ただ肥後ずいきを性器に突っ込むだけでなく、それを〈プレイ〉に昇華しないとまったく盛り上がりません。
そう考えると、スポーツ誌や週刊誌の広告にある数々の媚薬も「インチキ!」と斬り捨てられるものではないのですね。それを飲んだのがエクスキューズになって女性が大胆になれるなら、または奥手な男性が媚薬香水に後押しされて女性を大胆に口説けたなら、それはそれで抜群の効果があったといっていいのではないでしょうか。ただ性欲を刺激するよりも、そのほうがよほどいいセックスができるはず!
■桃子/オトナのオモチャ約150種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。ブログ、twitter
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