「女子といる方が楽なんですよ〜」の魂胆とは?
佐藤 ていうかさ、その前に「女子力」って言葉がおかしくねえか、って話じゃないですか。この本によれば「従来、女性がやっていたり、得意とされていた領域の力が備わっている男性」というのが女子力男子の定義だけど、家事や料理や美容に関する能力がなぜ「女子力」と呼ばれていたのかってところを、女子力男子は全然考えてない気がする!
清田 それだけじゃなく、「いつも優しくいろ」「男を立てろ」「男を超えるな」「貞淑たれ」「年相応の振る舞いを身につけろ」とか、とてつもなく様々な要求が「女子力」という言葉にはぶち込まれてて、これに苦しめられている女性はめっちゃ多いよね。女子力男子のはスイーツ作ってドヤ顔だけど、これが女子なら、たとえ料理ができたとしても、「これくらいで女子力高いなんて思っちゃダメだよね……」って考えちゃうと思う。
佐藤 あ~、だんだん腹立ってきた! そういう背景を無視して、「料理作れる俺って女子力マジ高くね?」とか言っちゃうのはどうなのって話ですよ。
清田 社会もそういう男たちを甘やかすからね……。ちょっと料理しただけ、ちょっとスキンケアしただけで「最近の男子は女子力高すぎ~」って褒めてもらえる。どんだけハードル低いんだよ! まあ、我々もちょっと恋バナしてるだけで「男子なのに珍しい」って下駄をはかせてもらっているような気がしないでもないですが……。
佐藤 女子力男子ってさ、そういう利益のニオイを絶対に嗅ぎ取ってるよね。前にそういう場面に立ち会ったことがあるんだけど、3人の女子と1人の男子がいて、その男が高級な化粧水を使ってることを蕩々と自慢してた。女子たちも「見習わなきゃ~」って感じで聞いてあげてたんだけど、その男の姿って、典型的な「僕の話を聞いて聞いて!」なわけじゃないですか?
清田 そうだね。むしろ女子力ないよね。共感ベースのコミュニケーションが成立していないわけだから。「女子力」という言葉のせいでわかりづらくなってるけど、これも結局は自分の話ばかりしている“THE・男”なんだと思う。
佐藤 だからさ、女子力男子は「女子と一緒にいる方が落ち着く」ってことをよく言ってるけど、そりゃそうだろって話ですよ。だって優しく話を聞いてもらえるんだから。
清田 もっとも、その根底には、「男と一緒にいると疲れる」って思いがあるような気もする。“競争”をベースにした男型のコミュニケーションに対する怯えというか。
佐藤 それに疲れちゃったという気持ちはわからなくもないけど……。女子相手に女子力を誇示して褒められようとしたんじゃ、やってることは男型のコミュニケーションだし、女子に対するマウンティングの一種にも感じる。
清田 全然関係ないかもだけど、もしこれが逆だったら世間は叩くでしょ?
佐藤 逆って何が?
清田 例えば女子がSNSに札束をアップして、「私マジ稼いでるわ~。完全に“男子力女子”だわ〜」なんて書き込んだら、ボコボコに叩かれるような気がする。
佐藤 世間の男たちはそういう女子を脅威として排除するだろうね。
清田 この本は「女子力男子=新しい市場を創り出す存在」というマーケティング的な視点なので、そもそもからして完全な言いがかりなんだけど……言いたかったのは、女子力男子をもてはやす風潮には、男のズルさや非対称性をガンガンに感じるってことです!
佐藤 女子力を身につけることは別に「日本男児の衰退」なんかじゃないし、好きにすればいいことだと思うけど、それをナルシズムや、女子に対するマウンティングの道具に利用すんなって話ですね。そんなに女子力を上げたいなら睾丸を抜いてこいということで!
■桃山商事 清田代表・佐藤広報/二軍男子で構成された恋バナ収集ユニット「桃山商事」。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆など、何でも手がける恋愛の総合商社。男女のすれ違いを考える恋バナポッドキャスト『二軍ラジオ』も更新中。コンセプトは“オトコ版 SEX AND THE CITY”。著書『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)が発売中。Twitterは コチラ。
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