
(C)柴田英里
女児向けテレビアニメ『ハピネスチャージプリキュア!』(テレビ朝日系)が終了間近ですね。
最近、女児向けアニメは、
・プリキュア→「異性愛のどん詰まり」
・アイカツ!→「分離主義レズビアンフェミニズム」
・プリパラ→「クィアスタディーズ」
というカテゴライズをして見ているのですが、『ハピネスチャージプリキュア!』においてとりわけ印象に残ったのは、作品内の主要男性キャラ4人の描かれ方です。
■地球の神・ブルー
プリキュアの少女たちの拉致監禁が横行していることを知りつつプリキュアスカウトに勤しんだり(それってほぼ女衒じゃね?)、自分自身が恋愛におけるトラウマを持つことから、少女たちに「恋愛禁止」を押し付ける理不尽なダメンズ。
■メインプリキュアの幼なじみ・相楽誠司
キュアラブリーこと愛野めぐみの幼なじみで、プリキュアたちの補佐役を務める空手男子。「好きな女の子よりも力がない劣等感」と、「好きな女の子が恋をした男(=ブルー)への嫉妬心」に苛まれながらも、懸命にキュアラブリーをサポートしようとするが、結局敵に洗脳される(闇落ち)。いつも肩身が狭かった、ように見える。
■プリキュアハンター・ファントム
世界中で活躍する大勢のプリキュアたちに暴行の末、変身が解けてバスタオル一枚のような格好の状態の少女たちを拉致監禁しまくった敵キャラ。しかしキュアハニーに救われ、「飼い主(クイーンミラージュ)の飼育状況が悪かったし、小動物(妖精)だし洗脳されてたっぽいから仕方がないね」みたいなゆるふわ論理によって(?)無罪放免となった。
■憎しみを司る神・レッド
かつては赤い惑星の良き神だったが、その星が滅亡したことで悪に転じたすべての黒幕。理不尽な八つ当たりで地球を滅ぼそうとするだけでなく、女子中学生にいきなり「自分を愛せ」と抱きつき(立派なセクハラです!)、「女子中学生の無償の愛」を神格化してすがる。自分がクズだと自覚した上で行動する厄介なクズである。
『ハピネスチャージプリキュア!』は、ダメな男性たちが、己に鞭打ってがんばる少女の愛に助けられる物語であるのかもしれません。
しかし、『ハピネスチャージプリキュア!』だけでなく、もともと、プリキュアシリーズではたくさんのダメな男性たちが描かれてきました。「男性、とりわけ父親が闇落ち→悪行を働く父親に娘が苦悩する」というエピソードがその最たるものでしょう。プリキュアシリーズの伝統と言っても過言ではないくらいです。
『ふたりはプリキュアSplash Star』のアクダイカーンと満・薫、『ハートキャッチプリキュア!』のサバーク博士と月影ゆり(キュアムーンライト)、『スイートプリキュア♪』のメフィストと調辺アコ(キュアミューズ)、『ドキドキ!プリキュア』のキングジコチューとレジーナ・円亜久里(キュアエース)が、その例です。反対に母親に関しては、死んでも娘を守護する『スマイルプリキュア!』のロイヤルクイーンのような人物もいます。『ハピネスチャージプリキュア!』の誠司くんやプリキュアハンターファントムは、父親ではありませんが、「大事な人への愛ゆえに闇落ちした」という点では、『ドキドキ!プリキュア』のキングジコチューに近いです。
普段はカッコいいけど肝心な時にはまったく役に立たない残念なイケメンとしては、『Yes!プリキュア5』『Yes!プリキュア5GoGo!』のココとナッツが顕著ですが、残念なイケメンであること自体は悪いことではありません。彼らは「残念さ」によって自罰的になったり他罰的になったりせず、彼らのやり方でプリキュアの少女たちと関係を築いていく「新しい男性像」ですらありました。ですが、『ハピネスチャージプリキュア!』のファントム(妖精)は、肝心な時に役に立たないどころか「大勢の少女を暴行のち拉致監禁」をしでかしますから、「残念なイケメン」や「ペットの粗相」では到底済まされないように思います。そして、全ての元凶とも言うべき二人の神は、祟り神でなければ納得できないほどいろいろと酷い、シリーズにおいて抜きん出たダメンズです。