
フルカラーで春画がたくさん! Amazonより
人生初のストリップ観劇でいたく感動(先週の記事参照)した私は、買ったままツンドク状態にしておいた雑誌に手を伸ばしました。その体験と何かしらつながりがあるように感じたからです。その雑誌とは『芸術新潮 2015年1月号』。「月岡雪鼎の絢爛エロス」特集を目当てに購入しました。
書店をぶらぶらしていたとき、タイトルより表紙の男女が真っ先に目に飛び込んできました。〈肉筆春画レボリューション!〉という惹句を見なくても、ただ抱きあっているだけでなく、明らかに〈真っ最中〉を描きとったものだとわかります。ふたりして頬をピンクに上気させて官能に浸りきった表情が、エロティックというより祝祭的なものに見えました。
月岡雪鼎(つきおか せってい)とは18~19世紀を生き、美人画、肉筆春画の名手として知られた人ですが、不勉強な私にとっては初めて耳にする名前でした。一昨年の記事、「江戸時代に花開いた究極のエロ表現、『春画』を日本の美術館でも見たーい!」で触れた、大英博物館の特別展「春画-日本美術における性とたのしみ」でも、ひときわ話題をさらった絵師のようです。通常、春画として知られているものの多くは印刷物ですが、それらは江戸で流行ったもの。当時も上方(=かみがた、いまの関西地方)には江戸とはちがう独自の文化があり、そこで流行ったのが肉筆の春画なのだとか。雪鼎はそのブームの立役者でもあるそうです。
五感を刺激される表現
中のページでは、表紙の男女の下半身もしっかり見せてくれていました。性器と性器でつながっているのが丸わかりですが、それだけが官能的なわけではありません。女性の足の指がぎゅーっと内側に丸められている感じ。「あー、これわかるわかる」と思わずうなずきました。私も気持ちいいと、こうなります。ほどけて乱れきっている女性の髪は黒々と豊かですが、アンダーヘアは案外ふわふわして繊細な感じ。一方で、男性のヘアはワイルドにうねっています。そして、場所によっては濡れて細い束になっているのです。女性の陰唇のすき間からのぞく粘膜より、ちらっと顔を出したクリトリスより、何よりこの濡れた毛束にエロスを感じます。
なぜかというと、音を感じるからです。私が見ているのは絵ですから、当然、AVのようにアンアンという盛大な喘ぎ声も、激しい息づかいも聴こえてきません。エロ漫画にあるような、〈ぐちゅぐちゅ〉〈ぬぷぬぷ〉といったオノマトペもありません。なのに、その毛によって女性の濡れ具合が連想され、そこにペニスが出入りするときの音が聴こえてきて、なんなら匂いも想像され、視覚だけでなくいろんな感覚が喚起されるのです。
肉筆春画は1点モノの贅沢品。当時の上流階級の人のために書かれたものなので、惹句にもあったとおり、まさに豪華絢爛です。本書に収録されている作品のなかには、かなりマニアックなものもあります。寝取られプレイ、張り型(ディルド)でオナニー、超熟女、獣姦……春画というとこうしたキワドいプレイがお約束な向きもありますが(タコ足の触手攻めとかね)、そうではないフツウの男女の交合が実にいいんです。濃い情を交わしあうふたりからあふれ出る多幸感が、絵にさらなる彩りを加えているように見えました。
1 2