かつて「CanCam」(小学館)の看板モデルを務めていた頃は、誌面で求められているモデル像があり、それを忠実に体現してみせていた山田。前々から「休みの時はヘアもファッションも冒険したい!」と話していたそうで、雑誌モデルの縛りから解放されている今、自由に髪色を変えて楽しむのは彼女の自由だし、ベーシックでない個性的なファッションに身を包むのも彼女の自由である。「昔の方が良かった」と懐かしむのもまた読者の自由だが、「だから今の山田優はダメ」と言い切っていいことにはならないだろう。
スリムな体型についても、必ずしも無理なダイエットによるものとは限らない。個人の体質によって、出産後、何もしなくともガリガリに痩せてしまう女性もいる。母乳育児で産前より痩せることもある。山田はもともと「どんなに食べても太れない」くらいの痩せ体質ゆえ、不自然でもないのでは。
出産後に仕事をすることに対して「まだ早い」とか「子供がかわいそう」等の言葉を投げかけられるのは、芸能人のみならず一般女性でもあると思うが、家庭の事情・保育事情・仕事の事情、すべて人それぞれだ。自分の価値観や経験則をむやみに押しつけても意味がないどころか害になる。
もっとも的外れなのは、山田が「VOGUE JAPAN」の写真で胸元の大きくはだけた着こなしを見せたことへの「おっぱい出しすぎ!」という苦情だろう。豊かな谷間を見せつけることが下品だ、という主張もわかるが、彼女が「モデルとしてカッコいい画づくりをする」仕事に、母親か否かは無関係だろう。ありきたりな「ほっこりママモデル」のイメージを求められる仕事であればそうしただろうし、今回はモード系のスタイリッシュなイメージを要求されて表現しただけではないだろうか。
先日、「京都新聞」のTwitterアカウントで「おっぱいは誰のものか」についてつぶやいたことが炎上を招いたが、今回の山田優に対しても「その時期のおっぱいは自分の大切な大切な子供だけのモノであって露出するようなモノでは無いのに」というコメントが目について驚いた。山田優のおっぱいは山田優のもの、でファイナルアンサーでは……?
山田優への過熱するバッシングを観察していると、「女性が、他の女性の足を引っ張る」不毛な構図が見えてしまう。そこにあるのは嫉妬だけではないが、「自由そうに見える女性」がある種の反感を買うのは確かなのだろう。
(ヒポポ照子)
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