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ドラマ『問題のあるレストラン』第一話が描いた「人間を社会的・精神的に殺すことの罪」

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都合のいい女化しても生き延びられない

 もう一つ私がこのドラマを見て気になっていることは、いわゆる「名誉男性」の問題です。

 「名誉男性」とは、ものすごく大雑把に言えば、日本人が名誉白人と言われて喜んだこと同様に、「あなたは他の女とは違う」と言われることで男社会に認められる女性のことを言います。

 第二話までの段階では、男社会を割り切って諦め、せいぜい自分だけは割を食わないように、男が必要とする恋愛相手になることでどうにか生き延びようとする「キラキラ巻き髪の量産型系女子」川奈藍里が、ドラマに出てくる女性陣とゲイ男性の中で、唯一「名誉男性的発言」をしていますが、彼女がそのように振る舞うことで男社会の恩恵を受けたり、男性から認められたりしているようにはどうしても思えません。たま子との三角関係の果てに奪った(?)シェフ・門司誠人には「恋愛とは独占欲のある性欲。以上!」と宣言されていましたし、彼女が男社会をサバイヴするために歩む「生き延びる道」と考えていたものが、既に「死者の道」であったことに気づいている真っ最中といった印象です。

 現実では「高学歴女性」というだけで「名誉男性」的に見られるという差別的な風潮も残念ながらありますが、このドラマで東大卒のインテリ女性・新田結実は、「高学歴で頭の良い女性」ゆえに男社会で疎まれ排除されています。学歴や能力がアダにしかなっていないのです。

 このドラマの中には、「男女平等は反道徳の妄想」とか衆院本会議で発言しちゃう女性議員や、「出産したら(育児休暇を取らずに会社を)お辞めなさい」「性犯罪にあった被害者にも落ち度がある」なんて発言しちゃう保守女性の大親分・曾野綾子みたいな女性は存在しません。

 あまりにも単純明快に「男vs女」、いや、「男vsそれ以外」となるドラマの構造を、勧善懲悪的コメディと捕えるか、それとも日本の男社会への皮肉ととらえるかも、このドラマの評価が分かれる一因ではないでしょうか。

 そもそも「日本は男社会である」という点について認めず、「そんなことはない! 女は優遇されているのに文句ばかり言ってけしからん!」と怒り出す男性および名誉男性もいますが、2013年度の雇用均等調査によれば、日本における女性の管理職(課長以上の職)は未だに6.6%です。2年前の2011年度に比べ0.2ポイント下がっている現状です。日本の女性の社会進出にはまだまだ暗雲がたちこめている状況と言えるのではないでしょうか。

 『問題のあるレストラン』、第三話の時点ではまだ開業準備中ですが、オープン後もいくつもの波乱が待ち構えていることは明らかです。今クール、展開が気になるドラマです。

■  柴田英里(しばた・えり)/ 現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。Twitterアカウント@erishibata

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」