さて、肝心の「草食化は進んでいるのか?」ですが、数字のブレがあるものの、草食男子を「セックスへの興味・関心が薄い」と定義すれば、その割合は「ここ数年で急増中」ではなく、ずっと高い数字を保っていることがわかります。2008年を基準とすると、2010年以降の16~29歳の草食男子はその2倍近い割合を示している。セックスに興味がない若い女性も増加してはいますが、男性ほどのインパクトはありません。
以上を整理すると「草食男子はたしかに多い」が「肉食女子が増えているわけではない」ということが読み取れます。これを読んで「いや、肉食女子増えているでしょ。わたしの周りだとそうだもん」とお思いの方がいるのだとしたら、それは「肉食女子が増えている」のではなく、「男性に比べて女性の草食化が進んでいない」ことがそうした印象を作る要因かもしれません。
性欲のピーク期間が短くなっている?
さて、これら調査結果からは、「男性の性欲ピークの期間が、年々短くなっている」ことが気になります。2014年調査の男性は、30~34歳にわかりやすいピークがあり、その前後の年齢範囲では10ポイント以上の落差がある。他の年の調査を見ると、ピークの周辺の落差はもう少しなだらかです。2014年の結果だけ見ると、まるで男性の性欲が30~34年の5年間に一気に燃え尽きてしまうかのようです。
まあ、2010年にも似たような分布をとっているので、実際にはなんとも言えないんですが、仮に男性の性欲ピークが短期化しているのであれば、異性との関わり方にも影響が考えられるでしょう。異性と関わりを持ちたいという欲求が、性欲によってドライブされていると単純化して考えると、男性が異性と積極的に関わりたいと思う期間も短くなってしまいます。女性側から積極的にアプローチしても、35歳を過ぎると性欲のピークを過ぎているので全然なびかない……とかね。
生涯に男性は5年間だけ恋愛に積極的になる、ってセミみたいですが(セミも一生懸命鳴いているのはオスです)、世の中の変化を考えると、性欲のピークが短期化してもおかしくないようにも思います。セックスだとか恋愛以外にも楽しいことってたくさんありますもの。人とのコミュニケーションの楽しさも、SNSに写真アップロードして「いいね!」してもらえば簡単に手に入ったりするし、セックスそのもので得られる快楽と同等、あるいはそれを上回るオルタナティブな何かが得やすい時代と言えるかもしれません。そもそも「草食化」というフレーズも、「恋愛市場では男が女を“獲得する”のが当たり前」「男は女とヤリたくて当たり前」という前提に基づいた概念です。成熟したカルチャーを持つ社会で、セックス(や結婚)にのみ幸福や価値を見出さず、別の領域に興味が移ろうのは、おかしなことではないかもしれませんね。
■カエターノ・武野・コインブラ/80年代生まれ。福島県出身のライター。Twitter:@CaetanoTCoimbra
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