さて、そんななか、私が一番衝撃を受けたのは、数名の方が「私も!」となった、こんな布ナプ・ビギニングです。
「生理痛がひどいので医者に行ったら、そっけなくピルの服用を勧められてショックを受けて……。そんな対処療法しかできないなら、布ナプキンで根本から改善したいと思ったんですよね」
彼女たちのなかでは、医師のドライな対応ではなく〈ピルを勧められた〉ことが問題視されているようです。日本がいくらピルに理解の浅い“ピル後進国”とはいえ(日本は低用量ピル使用認可が、他国よりも30年遅れた)、むしろ子宮内膜症も予防でき、重い生理痛などの月経困難症も軽減できるピルに、何故そこまで拒否反応!?
これは参加者の大半が、薬をよしとしない健康法〈冷えとり〉実践者ということも関係しているようです。アトピーも不妊も更年期障害も虫刺されも、足を温めると改善する「冷えとり」は、以前ご紹介したとおりですが、布ナプユーザー&冷えとり信者には、いわゆる「お薬飲んだらいけない教」が浸透しているようです。
ちなみに生理痛は、子宮内膜がはがれるときの痛みから来るもの。生理痛の緩和にピルが処方されるのは、ピルに配合される黄体ホルモン様物質の働きによって子宮内膜が厚くならないので、はがれ落ちるときの経血量が減り痛みも軽減されるというしくみだからです(ここで説明するまでもないと思いますが)。
ピルへのヘイトスピーチまで
また、ホルモンバランスの急激な変動が原因となるPMSの緩和にも効果的です。だから病院で生理痛の悩みにピルを勧められるのは、ごく普通のこと。布ナプ推しの一部は〈昔(紙ナプキン誕生前)はこんなに子宮の病気はなかった!〉なんて言うけれど、それは単純に昔の女性より、現代女性のほうがはるかに生理の回数が多く(初潮開始年齢が早く出産回数が少ないから)、卵巣と子宮に負担がかかっているのが原因であり、紙ナプキンのせいではありません(ましてや紙ナプキンで子宮が冷えるなんてことも根拠ナシ)。布ナプ布教者たちは子宮や卵巣の病気を懸念していますが、本気で予防したいならそれこそピルを検討してはいかがでしょう。
さて、布ナプや冷えとりの根底に科学的なものを極力排除したい思想があることは承知しながらも、なぜピルがこんなに悪者? とネットで検索してみたら、出ましたよ、一発で。布ナプキン専門店の代表者である女性のブログに、こうありました。
〈ピルを服用する目的が、血栓やPMSや片頭痛や落ち込み太ってしまったり、乳腺炎・膣炎などの副作用や危険性と引き換えにでもあるのだと、考えるのであればそれは仕方ない〉※原文ママ
〈生理痛やPMSは布ナプや食事、生活スタイル、でいくらでも改善していくことはできるのに〉
ーー布ナプショップ代表のブログより
ピルに指摘されているデメリットがあるのは確かですが、数でいえば〈低用量ピルを服用していない女性の静脈血栓症発症のリスクは年間10,000人あたり1~5人であるのに対し、低用量ピル服用女性では3~9人(日本産婦人科学会の見解より)〉です。もしかしたら、布ナプ専門店の代表者さんは、含有ホルモン量が多かった昔のピルのお話をされているのでしょうか。現在は最小限の量に改良済みですので、医師の処方で服用する分にはご安心を(服用してはいけない人は、ちゃんとチェックされます)。