
Photo by Amir Farshad Ebrahimi from Flickr
精液は健康や美容にいい……そんな都市伝説を耳にしたことのある方は多いだろう。一部では「良質なたんぱく質」だと崇められ、最近ではアミノ酸やヒアルロン酸、コエンザイムA型やクエン酸、DHAなど、美容にいいとされる成分を多く含んでいるとの謳い文句まで目にする。では、成分濃度の安定したフレッシュな精液を定期的に摂取すれば、美容面でてきめんの効果が得られるのか、というとそれはわからない。科学的なエビデンスもない。しかしこの都市伝説を検証するため、“飲精健康法”を身をもって実践した猛者がいるという。
「私と同じ店にいたアリサ(仮名)って娘が、『精液は体に良い』って本当に信じて試してたんです」
都内のデリヘルで働くカオリさん(仮名)は語る。
「彼女はそもそも風俗業界に入ったのも『タダで精液をタップリ飲めて、お金までもらえるなんて夢みたい!』という理由だったと話していました。本音かどうかわかりませんけど……。うちの店では口内発射はオプションなんだけど、アリサは自分が飲みたいからってタダでやって。それがある時期からネットの口コミで広まって、かなりの人気嬢になってたんですよ」
アリサさんは指名が急増して多忙になり、忙しさからか少し痩せてスタイルも良くなったという。
「『お金は一杯もらえるし、キレイになれるし、皆やった方がいいよ~』なんて言ってました」
ところが、そんなアリサさんの様子が、人気嬢になって1カ月もするとおかしくなってきたのだそうだ。
「もうガリガリになるぐらいまで痩せちゃって、蕁麻疹が体中にできて、肌はボロボロ。しかもいつもお腹の調子が悪いみたいで、プレイ中にトイレに駆け込むこともあり、人気が一気に落ちちゃったんですよ。慢性的な体調不良から精神的にも参っちゃって、ちょっとしたことですぐに泣くし……」
カオリさんら友人は、アリサさんを「どうしてそんなに痩せて、体調を崩してしまったのか」と問い詰めた。すると彼女は、「実は精液の飲みすぎで食欲がまったく湧かなくなった」と話したという。さらに、常に熱っぽく倦怠感があるとアリサさんが訴えたため、病院へ連れていくと、何とアリサさんは喉の粘膜にクラミジアや淋病などの性病菌が感染しまくっていたことが発覚したのだ。
「私も診察に付き添ってお医者さんの説明を聞いたんですけど、口の中は粘膜なのでフェラでも性病に感染するんですね……。精液なんか、飲んでも美容や健康に良いどころか、リスクがあるだけだと。成分上はそれなりに栄養もあるらしいんですけど、消化は良くないから人によってはお腹の調子も悪くなるって」
休暇を取り、病気の治療に専念することにしたアリサさん。しかし、悲劇はそこでは終わらなかったのだという。
「治療を終えてお店に復帰した後のアリサはさすがに懲りたのか、精液を飲むのはやめたんですけど、その後もなぜか蕁麻疹の症状だけは治らなくて。しばらくしてまた病院に行ったら、『精液アレルギーの可能性がある』って言われたそうです。そうなると、もう風俗では働けないし、普通に恋人と性交渉するのもしんどいですよね……」
精液アレルギーとは、名前の通り精液に体が過剰反応し、炎症などが起こってしまうというもの。アリサさんの蕁麻疹は、この精液アレルギーが原因であったというのだ。ただ、一時期までは精液を飲んでも異常を来さなかったアリサさん。先天的にアレルギー症状を隠し持っていたのが、あまりに飲み過ぎてしまったことで発症したのだろうか?
「後天的にアレルギーになる場合もあるらしくて、何が原因でそうなるかはわかっていないようですが、でもアリサの場合は絶対に精液を飲みまくったのが原因だよねってお店の娘たちとは話してます」
アリサさんはデリ嬢を辞職。その後、カオリさんに「死にたい」「なんで私がこんな目に」という内容のメールを何回か送るほど落ち込んでいたそうだが、今では連絡が取れなくなってしまったそうで行方が心配されている。
キレイになるどころか、性病やアレルギーまでを引き起こし、一人の女性を地獄へと追いやることになった飲精健康法。やはり都市伝説は、都市伝説のままにしておいたほうが良かったようだ。
(高井りえ)