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「性的虐待、DV被害者だけど、セックスをあきらめたくない!」サバイバーはる香の挑戦

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20代女性の10人に1人は、性暴力の被害を経験している

 内閣府の調査によると、

「20代女性の10人に1人は、異性から無理矢理性交をされたことがある」
「女性の3人に1人が、恋人や夫からDVを振るわれたことがある(結婚経験者のうち、配偶者から一度でも「身体的暴行」「心理的嫌がらせ」「性的強要」を受けたことのある女性)」

 といいます。(平成24年度、内閣府男女共同参画局「男女間における暴力に関する調査」より)

 性暴力は、日常にあふれているものなんです。

 でも、私の周りで、「きのう、彼に髪をつかまれて、思いっきり壁に叩きつけられちゃった。これが本当の壁ドンよね」と日常的な暴力を明かしたり、「男友達に無理矢理ヤラれた。許せない!」と憤ったりしている女性は、見たことがありません。

 「言えない」から、「無いこと」になってしまっている。

 無理やり性交された経験がある女性のうち、誰かに相談した人は約4割。警察に被害を届けた女性は、わずか3.7パーセントしかいません。ほとんどの被害者が、泣き寝入りしてしまうのが現状です。

「恥ずかしい」
「思い出したくない」
「ショックが大きすぎて、言葉にならない」

 こうした理由から口をつぐみ、

「私に隙があったから……」
「はっきりイヤだと言えなかったから……」
「私にも悪いところがあった……」

 と自分を責めてしまう。

 誰にも相談できないことで、心の傷はさらに深まります。

「早く忘れたい。でも、忘れられない。こんなことに捕らわれている私はおかしいんじゃないか?」

 と、自己嫌悪に陥ってしまう。

 私も、その1人でした。

彼女はさらりと、「私、レイプされたことがあるんですけど…」と言った

 数年前、あるアートフェアでのことです。広い会場はブースごとに仕切られ、芸術家の卵と、たくさんのお客様でにぎわっていました。

 私はそこで、ある一枚の絵に釘付けになりました。半裸の女の子が地面にぐったり横たわり、泣き笑いの表情を浮かべている絵。じっと作品を見ている姿に気づいたのでしょう、作者の女性が、「こんにちは。これ、私が描いたんですよ」と、話しかけてくれました。

「すてきな作品ですね。きれいだけど、ちょっと怖い気がして」

「怖い……。そうかもしれません。実は、この作品のテーマはレイプなんです。私自身、被害を受けたことがあるんですけど、警察でも、オロオロしてしまうばかりで、なかなかうまく事情を説明できなかった。口では上手に説明できなくても、絵だったら描けるかなと思って」

 私は「えッ?」と耳を疑いました。

 一般的に、レイプの被害者というと、気の毒で、かわいそうな女性というイメージがあります。被害者女性は、打ちひしがれ、暗い顔をしてうつむいているのだろう。男性の視線を恐れ、女らしさを打ち消すような振る舞いや、ファッション、メイクをしているのだろうと。

 でも、原宿系のカラフルな洋服に身を包み、ニコニコと愛想よく自分の作品について語る彼女は、本当に普通の女の子。まさか性暴力のサバイバー(性暴力を経験し、生き抜いた人)だなんて、到底思えません。

 会場を一周した後、どうしても気になって、再び彼女のブースを訪ねました。「あ、どうも」と彼女。

「私も同じような目にあったことがあるの」

 私は思わず、そう口走っていました。

「あ、そうなんですか」
「今まで絶対誰にも言っちゃいけないって思ってた」
「ペロッと言っちゃえば、意外と平気ですよ」

 と、彼女は笑いました。

 性暴力って、言っていいんだ!
 秘密にしなくてもいいんだ!

 私にとって、それは天地がひっくり返るような衝撃でした。

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