D氏とさくら夫人は06年4月に交際をスタートし一年後に結婚するも、08年3月には離婚が成立しており、D氏はその離婚原因をさくら夫人が多重人格だったためとして、「結婚生活は忘れない恐怖」と告発本に詳細を語っているようだ。さくら夫人はわずか一年ももたずピリオドを打った結婚生活の中で、あきらかに人格が豹変し、D氏を「もっと稼げ!」等と罵倒することが度々あったのだという。興奮して倒れ、目を覚ますといつもの穏やかな夫人に戻っていたそうだ。さくら夫人も自分の中に違う人格があるのではないかということに悩んでいたようで、アメリカのカウンセラーに相談していたこともあるという。
「女性自身」ではD氏の証言を引用したあと、精神科の香山リカ氏による「多重人格の人は幼少期にトラウマがある人が多い」というコメントを掲載しているのだが……今のところ、さくら夫人がなんらかの「幼少期のトラウマ」を抱えてPTSDに悩まされているのかも、多重人格障害を患っているかどうかも、憶測にすぎないだろう。この手の記事は、親などからの虐待・性虐待等でPTSDに苦しむ人への偏見を強める恐れもあり、さくら夫人への否定的イメージが蔓延する中でこうした情報が流れることは危険だ。
現在、たかじんの遺産を巡って、さくら夫人とたかじんの実子は裁判沙汰となっている。その渦中でこの告発本の出版だ。どうやら騒動はまだまだ長引きそうであるし、ひょっとすると第2、第3の告発本も出てくるかもしれない。百田氏も早速この告発本について自身のTwitterアカウントで反論を開始し、「犯罪を犯したわけでもない一女性をここまでヒステリックに執拗に叩く理由がわからん。狂った正義感か」と嘆いてもいる。
大阪出身の筆者としてはこの騒動はただただ切ないばかりである。大阪ではカラオケの定番ともなっているたかじんのあの名曲の数々――。これからはもう、かつてのように歌えないし、音楽番組で誰がカバーしたとしても良い気分で聴けなくなってしまう気がするのである。おそらくそう思っている関西人は少なくないのではないだろうか。たかじんの熱烈なファンではなくとも、やっぱり彼は関西では特別な人だったのだ。たかじんの金と権利をめぐる内紛はそろそろ終わりにして、これ以上彼が築いた世界観を壊さないで欲しいと願うのである。
(エリザベス松本)
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