これは、当連載で以前ご紹介した胎内記憶研究の第一人者、池川明医師も語っている「妊娠中のおかあさんから分泌されるホルモンは、胎盤からへその緒を通じて、すぐに赤ちゃんへと伝わります。おかあさんが『幸せ』『いい気持ち』と感じるときにはドーパミンやβ-エンドルフィンなどのホルモンが、すぐに赤ちゃんに流れていきます。逆に、イライラしたり気持ちが不安定だと、それも赤ちゃんに伝わります」というヤツですね(プレママタウンHPより)。
ただし一般的には、〈胎教に科学的根拠はほとんどなし〉とも言われているようでありますが……。
続けて講師は、胎教で行われる〈語りかけ〉について、こんなエピソードも話してくれました。
●語りかけエピソード1:「妊娠中は臓器が圧迫されるのでお通じが悪い場合が多いんですけど、おかあさんがトイレに入る時に決まった歌を歌っていたら、“あ、今おかあさんはトイレなんだ”と理解して、出やすいように姿勢を変えてくれるようになったそうです。そんなふうに赤ちゃんたちって、お腹の中にいるときから、ちゃんと自分なりになにかをすることができるんです」
●語りかけエピソード2:「仕事中に、おかあさん今からお仕事だからね~と言っておくと、ちゃんとその間は静かにしていてくれるもの。お腹が張り気味だったけど、どうしても急いで向かわなくてはならない場所があったので“お腹にしっかりつかまっててね!”とお願いしたら、その後体調は快調だった …………etc.
胎児には空気を読む能力があり、さらに「話すというのは〈伝える、届く〉ということです!」と力説する講師。そうだと理想的ですが、話の通じない相手がいるのが世の常でありまして……。
妊婦は常に清く正しくいなさい
ところでお腹へ話しかける声と、他の人と話す声はどうやって聴き分けるのかという疑問が残ります。自分への声かどうかも、ホルモンに現れるのですか?
胎児は20週頃になると音を聞くことができるようになりますが、羊水の中にいるため、空気中のようにクリアには聞こえません。でもおかあさんの声は振動として伝わるので、言語として認識しているわけではないものの、それが何かしらのメッセージとなって伝わるということらしいです(おそらくホルモンから伝わる感情もあわせて)。しかしその理屈だと、赤ちゃんに向かって語りかけている言葉だけでなく、日常の会話も何かしら伝わっていることになりますよねえ。
妊婦だって愚痴も悪口も言えば、仕事上の世知辛い話もするし、性欲だって普通にあるので……全力で、聞かれたくない!! 結局のところ〈いい胎教〉とは、そんなゲスモードを封印し〈おだやかなおかあさんモード〉でリラックスして過ごしましょうということに思えました。
そんな講座はまるで〈道徳的指導〉をされているような空間。ほっこり胎教トーク話を聞いているとどんどん居心地が悪くなり(あ、コレって胎教に悪いですね)、今すぐ家に帰ってジャンクなものをむさぼり食いながら『ママだって、人間』(田房永子著、母性神話への疑問を描いたコミックエッセイ)を読み、俗世の瘴気(しょうき)を浴びまくりたい衝動にかられました。