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春こそソックス5枚履き! 冷えとりの女王が近著で怪しいネタを大々披露

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冷えとり女王の思想が詰まった『body&soul 3 冷えとりと女性のからだ

 「そろそろムートンブーツはしまおうか」なんて思い始める陽気の今日このごろですが、靴下を5枚6枚重ねて履く〈冷えとり勢〉は「季節は関係ねえ!」というご様子で、この春(3月16日)『別冊mar mar magagin(マーマーマガジン)body&soul 3 冷えとりと女性のからだ』が発売されました。女性誌界隈では冷えに関する特集は肌寒い秋ごろから盛んになるのが一般的ですが、冷えとり界のいう冷えとは〈冷え性〉のことではなく、〈上半身と下半身の温度差がある状態〉をさすため、季節は関係ないのだとか(イマイチよく分からんけど)。

 さてこの『body&soul』、1号2号では冷えとりアイテムや具体的なやり方が紹介されてきたようですが、今回の3号は全81ページ中32ページが、読者の感動的な冷えとり体験談(残りは主に商品やスナップ)。しかしメインディッシュである体験談の前に、「怪しげな健康食品系の冊子と同じ体裁や……!」と早くものけぞりがちに。エビデンスなく体験談だけが紹介されていくこの雛形、怪しげな商品(もしくは宗教)のパンフレットのまさしくそれではないですか。この冊子を発行している会社は、冷えとりでだいぶ儲けていらっしゃるようですので、そろそろこのへんも解決したほうがよいのでは……なんて、大きなお世話ですか?

 肝心の体験談は、〈婦人科系〉のお悩みをフィーチャーしているのが特徴です。いかに湿疹や発熱等の好転反応(冷えとりでは、めんげんと呼ぶ)※1が出たかという流れから、

・毒出しを経て自然妊娠!(ついでに安産)
・免疫力を高めて子宮頸がんの疑いがなくなった!

・不育症を乗り越えて出産

 という話が続きます。※消費者庁は〈好転反応〉〈毒が出ている〉といった言葉は、利用を続けさせるための典型的な言い回しだと説明しています。

冷えとりで妊娠ブームが来ちゃう?

 このような特集になったのはどうやら、本誌『mar mar magagin』の編集長でありブームの仕掛け人でもある服部みれい氏が冷えとりを始めたきっかけが、〈妊娠しやすい体になるように(P31「冷えとり わたしの本当の動機」より)〉であるからのよう。服部氏がご結婚されたのは、記事によると42歳のとき(現在44歳)。大変失礼ながら、少しでも子どもを持つことを考えるなら、靴下重ね履きで自然妊娠を待ってる場合じゃないと思うのですが……。しかし服部氏はこう語っています。

「今、世の中の流れは……なんのキャンペーンなのか、40代の女性にとってネガティブなものが多いと感じます」

 これにはもう、なんと言ったらいいのやら(白目)。不妊治療や卵子の老化報道は決してネガキャンではなく、世の中の晩婚化やこれまでの情報不足から〈産み時〉を逃してしまわないように、専門家が警鐘をならしているのですよ……!! 「たましい」や「自然の導き」を重要視するスピ的健康法は楽しみの範疇なら結構ですが、不調の改善や妊娠を望むなら、現実的な数字にもどうか目をむけていただきたいところ。ちなみ卵子老化について解説された『私、いつまで産めますか?』(香川則子著・WAVE出版)によると、体外受精をもってしても42歳の妊娠率は5%(コレもネガキャンって言われちゃう?)。

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山田ノジル

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。当サイトmessyの連載「スピリチュアル百鬼夜行」を元にした書籍を、来春発行予定。

twitter:@YamadaNojiru

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