服部みれい氏は「授からなくてもきっと他のお役目がある」といいますが、〈冷えとりで妊娠!〉なる体験談に頼る人が出てくるのではないかと、ひたすらヒヤヒヤするスリル満点の1冊でした。いや、これは冷えとり健康法の指南書ではなく、冷えとりというお題のポエム集だと思えばいいのかもしれません。
お次は昨年11月に発売された『わたしの中の自然に目覚めて生きるのです:あたらしい暮らしのちいさな魔法』(服部みれい著・筑摩書房)をご紹介。
冷えとりの女王(著者)が出会った数々の「自然の法則」に目覚めると、安心できる生き方にたどり着きますよ、という、いわば啓蒙本です。ここで言う自然は〈1・海や山などの一般的な自然〉〈2・自然の法則に従って暮らす意味での自然〉〈3・自分自身の内側にある自然〉といいますが、精神世界にウトい私には、2、3がよく分からない!
女王のブレないアドバイス
分からないけど、本で語られている具体的なアドバイスを一部拾ってみましょう。
・トラブル解消には、自然の流れに逆らわないこと!(なりゆきまかせってこと?)
・孤独です→人間は大いなものとつながってるよ!(大いなる存在に孤独死を防いでほしいですね)
・誰かを助けたい→人はもともと完全な力を持ってるから大丈夫!(巷のお悩み相談の立場は……)
・不調が出た→気づくチャンスだと喜んで(なんてポジティブッ!)
・八方ふさがりです→宇宙レベルでみたらたいしたことない、もしくはカルマ返しなので過去に自分がしたことと思って耐える(打開策が知りたいですけど)
・運動不足→部屋を掃除しましょう!(それは好き好きでは……)
・ドラッグ→自分の中にある自然を発動すれば不要! だから瞑想するとよいよ。(壮大な解決法です)
・農薬添加物保存料が使われてない、エネルギーの高いものを食べよう、買い物はフェアトレードなど自然にやさしいものがオススメ!(へ、平凡……!)
しかし明らかに自然じゃない脱毛は何故かOKで、「自分の心に従う」のが自然なんだそうです。うん、ちょっと何言ってるかわからない。
そしてこれらのアドバイス(?)の後に、〈ホ・オポノポノ(洗脳の危険性も指摘されているハワイのヒーリングメソッド)〉や〈潜在意識のクリーニング〉〈引き寄せの法則〉〈布ナプキン〉〈塩浴〉〈冷えとり〉〈呼吸法〉がまんべんなくプッシュされていくのは、著者毎度おなじみの手法であり、さすがのブレのなさ。
要するに内なる声に耳をすませ、循環型社会を目指し、女性性を尊重し、反近代的・反科学的思想を取り入れ……って、こりゃ完全にほっこりテイストのニューエイジ運動ではないですか。ニューエイジ※2をなぞるのなら、今の時代だからこそのあたらしい要素が欲しいところでした(3.11以降を語るなどの安易なものはナシでお願いします!)。
※2ニューエイジ(wikiより一部抜粋)→アメリカ合衆国、とりわけ西海岸を発信源として、1970年代後半から80年代にかけて盛り上がり、その後商業化・ファッション化されることによって一般社会に浸透、現在に至るまで継続している、霊性復興運動およびその生産物全般、商業活動全般を指す場合が多い。
以上この2冊の本からは、ていねいに炒れたお茶でそぼくなおやつをムシャリと楽しむようなほっこり界にかつてのニューエイジ的なスピリッツが添加され、新時代のオシャレ自然派(別名・脅し系ナチュラル)発生!? という異界誕生の流れを感じた次第です。読み物として楽しむ分にはいいですが、実践する際はくれぐれもほどほどに……。
(謎物件ウォッチャー・山田ノジル)
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