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『問題のあるレストラン』が不気味なハッピーエンドで見せた問題

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(C)柴田英里

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 ドラマ『問題のあるレストラン』(フジテレビ系)、最終回の放送が終わりましたね。最終回が一番コメディ調が強く、「藤村さつきの裁判のゆくえ」や「一人のしつこいクレーマーによってレストランが閉店に追い込まれた経緯」など、物語の重要な部分があっさり抜け落ちてしまっていた印象が拭えませんでした。

 とりわけ、「藤村さつきの裁判」は、主人公田中たま子がレストラン「ビストロ フー」を開店するきっかけであり、たま子の行動の原動であったため、それがふわっと流されハッピーエンドのような描かれ方をするのは、逆に、意図的なものであると勘ぐりたくもなります。

 コラムにも書きましたが、第1話では、コメディドラマと言いながら全く笑えないセクハラシーンが、「社会への重要な問題提起」としても、「不愉快なシーン」としても話題になり、「不愉快なシーン」と感じた視聴者からドラマの制作側にクレームが入ったとも言われています。最終話では、1話とは対称的に、クレームなど入りようのないコメディドラマのハッピーエンドにあえて見せかけて、「不愉快だから見たくないと声をあげる者たちがふるう匿名の暴力」と、「弱い立場の者が立たされている大変な現実」を描いたのかもしれません。

 そして、「ハッピーに描かれた部分」こそが問題提起と捉えてみると、最終回のハッピーエンドは大変不気味なものになります。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」