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ピルは「高い」「ビッチ」「肌荒れる」「巨乳になる」? 本当のところを話すよ。ピル服用者座談会

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ピル座談会

都内某所でピル会議

 低用量経口避妊薬(OC、以下「ピル」)が日本で承認されたのは1999年6月。同年9月に発売が開始され、今年で16年めになる。しかし日本国内のピル普及率は、世界各国と比較して低い。どれくらい低いかというと、16~49歳女性のうちわずか3%。「世界各国と~」と海外を引き合いに出す時、「欧米と比べるな」という反論が一定数生まれるが、日本のピル普及率はアジアの他の国々よりも低く、アジア圏で最もピル普及の進むタイは女性の約37%がピルを利用している。

 日本でのピル普及を阻む要因は複雑だが、ひとつに女性側の「よくわからない、怖い」と思い込む気持ちもあるのではないだろうか。これには性教育の過程で、月経困難症や避妊についての知識が十分に伝えられていない背景もあるだろう。風邪を引いて病院にかかり、処方された薬は何の疑問も持たずに飲むのに、生理が重くても我慢して病院へ行かず市販薬でしのぐ女性は筆者の周辺にも少なくない。また、妊娠してしまったけれど経済的事情で産めなかったり、相手男性に中絶強要された女性を何人も知っている。

 でも、生理を毎月我慢してやり過ごす必要はない。経済的安定がない中での望まない妊娠もしなくていい。自分自身の健康をコントロールできるなら、したくないですか?

【ピル座談会:参加者】

おはなちゃん(22):女子大生。トリキュラー服用中「PMSがつらかった」

めぐみ(29):会社員(SE)ファボワール服用中「生理痛で救急搬送された」

ゆうこ(33):会社員(営業)ルナベル服用中「排卵痛で婦人科ジプシー」

ピルって、高いの?

――まずは皆さん、それぞれ服用中のピルについて教えてください。

おはなちゃん(以下、お) 私はトリキュラーです。いまはちょうど生理期間なので、偽薬ですね。でも、偽薬は飲んでも飲まなくてもどちらでもいいので、私は飲んでません。

ゆうこ(以下、ゆ) そうなんだ。私はルナベルだけど、偽薬はついていなくて、休薬期間という扱い。どちらでも同じなんですね。あ、トリキュラーのシートって、色分けされてるんですね。

ピル座談会

こちらトリキュラー

お 色によってホルモンの濃さが違うことが明示されてるんですよ。この時期は卵胞ホルモンが多いとか、黄体ホルモンが少ないとか……すみません、細かいところは覚えてない(笑)。ルナベル、どうですか?

 生理がものすごく軽くなりました。最初に処方された時は低容量(LD)バージョンだったけど、今年から超低容量(URD)に切り替わりました。

ピル座談会

ルナベルさん

――1シートが28日分なのは、どのピルも同じですね?

めぐみ(以下、め)そのようですね。私が処方されているのは、ファボワール。これ、ケースつきで処方されるんですけど、ケースがすごいダサくないですか?(笑) 売れないキャバ嬢の名刺入れみたいな……。

 ルナベルはピンクのパッケージで、いかにも婦人薬って感じ。色でけっこう印象が変わりますよね。

ピル座談会

ケースつきのファボワール

――みなさん、いつから飲み始めたんですか?

お 正確な日時は覚えていないので、お薬手帳を持ってきました。2012年9月13日が最初ですね。きっかけは、PMS(月経前症候群)の症状がヒドかったことが一番大きいです。あと、当時お付き合いしていた男性が「オレ無精子症だから」と自称して、ゴムをつけてくれないおじさんだったので、自衛のために、と婦人科の門を叩きました。ただ、その人と別れてから一時期、金欠になって婦人科受診できなかった期間がありましたけど。

め 20歳そこそこの学生にとっては、月に換算して数千円の出費でも痛い?

お そうだったんですよね……。バイトのお給料が月5~6万だったんですけど、毎月3万円は預金するって決めていたので、残りから交際費で1万5000円ほど引くと、もう払えない。というのも、月に換算すれば2000~3000円程度ですけど、ピルって1回に3カ月分くらい一気に貰うじゃないですか。診察代も含めると、その日に支払うお金が1万円くらいかかっちゃう。そのときは生でする人と付き合っていなかったし、貯金崩してまで買わなくてもいいかなって思って、通わなくなってました。

――通院と服用を再開したのはなぜ?

 またPMSがひどくなってしまって。彼氏とのデートの最中に、彼が何も悪いことしていないのに突然泣き出しちゃったんです、私。急に不安定になった。それで「また飲まなくちゃ」って思いました。今はピルのおかげで落ち着いています。

――副作用はない?

お 最初の一カ月くらいは、身体が浮腫みました。3キロくらい太ったし。あと、ちょっと頭が痛いかなって思ったけど、もともと偏頭痛持ちなのでそれはあまり気になりません。今はPMSの症状はほぼ消えています。

――PMSって、人によって症状も程度もそれぞれじゃないですか。いきなり死にたくなったり、攻撃的になったり、イライラしたり……おはなちゃんはどんな症状がキツかったんですか?

 そうそう。頭痛、倦怠感、吐き気、肌荒れ、腹痛、憂鬱な気分が続いたり、眠気に悩まされたり、集中力を欠いたり。私は精神的に不安定になってしまうことが一番きつかったけれど、今はピル服用のおかげでホルモンバランスが整っているので、大丈夫です。ちょっと落ち込むなあ、今日はテンション上がらないなあってことはありますけど、まあ、それは生きてれば誰にでもあることなので。男性にだってそのくらいはあるでしょうし。

――金銭的な負担は、今は解消されているんですか?

お バイトを変えたのと、大学の授業がほぼ終わって働ける時間も増えたので、収入が倍になったんです。大体、毎月10万円くらいのバイト収入があって、実家暮らしなので、預金額を差し引いても、3~4カ月に一回、婦人科に通って1万円払うのが大変じゃなくなりました。今ははお金よりも健康を重視しています。

――トリキュラーは1シートいくらですか?

お 税込で2700円です。それと、私の通っている婦人科は4カ月に1回、性病と血栓症の検査を受けなくてはいけないので、それが3000円。一度に4カ月ぶんのシートを処方してもらうので、合計で13800円。なので、ピルにかかる諸費用は、年間4万1400円の出費になりますね。それを安いと思うか、高いと思うかは人それぞれですし、食費や住居費・通信費でいっぱいいっぱいで、健康のための支出がそもそも無理っていう人もいるかもしれませんが。

 でも、健康のための支出は、侮れませんよね……。

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