YOUたち休暇取っちゃいなよ
育児にかかわる時間のひらきが夫婦間の溝を生んでしまうのは不幸なことです。同時に、今でも出産をきっかけにした女性の離職率は高いままで、男性側が「産後半日~1日の休暇」を取得する程度のことで“輝く女性の社会進出”など実現しようがありません。政府が是正すべきは労働環境の改善であり、国民ひとりひとりに「子育てしよ~ねっ」と語りかけることではなく、企業・雇用側に働きかけることが必要ですよね。なのに、「雇用者のみなさん、男性社員も子育てにかかわらねばなりません。男性社員の妻が出産した際は、半日~1日程度は休むよう奨励してください」って、甘すぎるでしょう。
ちなみに誤解されがちですが、会社員として組織に勤めていて健康保険に加入しているならば、「産休→ヤバい、無給!!」とはなりません。かといって、「産休中も給与をもらっている→働いてないのにズルい、金食い虫!」という批判も的外れです。労働基準法上は産休中の賃金保障を各企業に義務付けてはいません。しかし企業の就業規則等によりこの期間に賃金の支払を受けられない被雇用者は、健康保険等により出産手当金として休業1日につき標準報酬日額の3分の2相当額が支給されることになっています。つまり無給ではないですし、会社が賃金を支払っているわけでもないということです。また、産休期間中の健康保険・厚生年金保険の保険料は、被保険者分および事業主分とも免除されることになっています。誰も損してなくないですか? それでも男性はおろか、女性ですら堂々と産休・育休を取れない“社風”の企業も未だ少なくないようで……。
男性の産休や育休取得率を高めること自体は、少子化改善に有効でしょうが、このヌルすぎる目標値では、そもそもの目的がうやむやになりそうでもったいない。母性という固定観念を盾にして、あたかも女性には最初から育児スキルが備わっているように捉え、「育児のことはカミさんにはかなわないわ~」と開き直る男性も少なくありません。上の世代がそんなふうに開き直っていると、若い世代も踏襲してしまいます。男性の育児休暇取得率が低いままなのも、そうした開き直りが深く関わってるんじゃないか、と思うんですよね。
■カエターノ・武野・コインブラ/80年代生まれ。福島県出身のライター。Twitter:@CaetanoTCoimbra