
『産む力・育つ力を高める食養』Amazonより
前回の冷えとりの女王近著レビューに引き続き、今回も異界の風を感じられる珍本(?)2冊をご紹介させていただきます。まずは3月30日発売の『産む力・育つ力を高める食養』(WAVE出版・齊藤典加著)です。
著者の母親は、『長生きしたけりゃ肉は食うな』で有名な通称〈若杉ばあちゃん〉こと若杉友子氏。氏は、マクロビの創始者である桜沢如一氏と明治時代の軍医・石塚左玄氏の教えをベースに独自の理論を培い、〈若杉友子流食養〉を作り上げたことで知られる食養研究※の第一人者です。
※食養とは…石塚左玄の思想を基本とする食事療法。マクロビも、ここから派生したもの。
その教えの元に育った娘さんが、食を整えることで〈よい妊娠、出産、子育て〉に出会えることを多くの女性に伝えたいと、筆をとったのが本書のよう。さてこれが……2015年の現在リリースされたという事実がにわかには信じられないような、懐かしさすら漂うトンデモ理論の洪水!
マクロビはもともと〈すべての物事に陰・陽があり、そのバランスをとって中庸を保ち健康になりましょう〉という独自理論&世界観をもとに考案されているので、栄養学的におかしい! 科学的根拠なし! などをツッコんでも、もはや意味のないことでしょう。しかし、ここまで科学をまるっと無視する語りには、ひたすら驚くしかありません。
珍説の数々を紹介しましょう
昨今の融通をきかせた〈ゆるマクロビ〉なんぞ、子供のぬるいお遊びだぜ! となぎ倒されそうなハードコアなマクロビベースの食養講座、中でも特に私が口をあんぐりさせてしまったものはこちらです。
・「離乳食は、お母さんがよく噛んだごはんを与えてみましょう。100回噛んだごはんは、母乳に近い味になります」
ひいぃ! 虫歯菌が赤ちゃんに染るので、昨今の子育てでは厳禁とされているアレが! しかも本書によると「噛めば噛むほど唾液の酵素で殺菌力が増す」から大丈夫なんだそうです(いやいやいや)。実際に〈米、唾液で本当に母乳味になるのか?〉を確かめる勇気も湧いてきませんが、100回噛んだものを赤ちゃんに与えるという点で、生理的なハードルが高すぎると感じるのは、私が育児未経験だから? そういえば虫歯菌どころじゃなく、赤ちゃんへのキスでヘルペス感染→死亡なんてニュースもありましたよね(ふいに思い出した)。おお怖。
さらに妊娠中にお母さんへのアドバイスには〈病院や保健婦さんから2人分食べろと言われるけど、そんなことしなくて大丈夫〉なんてものも。わあ、昭和にタイムスリップした気分。今どきそんな指導をしている医療関係者、どこにあるのかむしろ教えていただきたいです(世代が上の大姑が~とかならわかるのですが)。
思わず腹を抱えて笑ってしまったお説は、〈ちりめんじゃこを食べると会陰が硬くなる〉です。〈出産時に会陰が裂けた〉というお母さん方に、どれだけちりめんじゃこを食べていたか、調査したのでしょうか。ちりめんじゃこの名産地で、助産師が「うちの地方のお産はみんな、どんな女性でもバリバリ~って裂けちゃうんだよねえ」なんて語るのでしょうか(※ただの想像です)。想像するだに、超シュール。