小雪が育った神奈川県座間市の実家には、枇杷や蜜柑の木のほか、野菜やシソなど和のハーブ系、ブルーベリー、ラズベリーなどが植えられていた。それは姉が肌が弱かったことや、小雪の母親自身も偏頭痛の持ち主だったため自然療法を研究して実践していたからだという。母親は枇杷の葉を干してお茶にしたり、熱があると育てていた薬草を煎じて飲ませてくれたり、腹痛のときはあたためたこんにゃくを枇杷の葉に包んでお腹にあててくれたりしたらしい。また、おやつもジャンクフードではなく、干物。ケーキが食べたいと言えば“黒糖は身体を温めるから”とかりんとうが出されるという徹底ぶりだった。こうして小雪は「食」の大切さや知恵が自然と身に付いていったという。ちょっと気になり、枇杷の葉&こんにゃく療法をググッてみたところ「温まって身体が楽になった」「使ったコンニャクは食べないでください。コンニャクが悪いものを吸ってくれてる」など、コンニャクが“毒出し”してくれているという記述があり震えた。エビデンスなしの完全ヤバい系である。しかし、『謎の水に心酔事件』で「アトピーや糖尿病が良くなった」という発言が出たのは、このような環境で育ったことで、目に見えないものや根拠のないものを信じるようになったためかもしれない。何かと小雪のルーツが伺える本である。自然派の母親の影響か、「カムイ外伝」の撮影時には炎天下の沖縄で仕事をこなすスタッフたちに「大量にクエン酸水を作って俳優部にもアクション部にも配った」というくだりがあり、なぜポカリじゃだめなのか…と疑問を抱かせる。「体調が悪そうな人がいると、声をかけて様子を聞いたり、サプリメントなどを手渡して」いたほか、撮影時に借りていたマンションにスタッフを招き、秋刀魚の塩焼き、ゴーヤチャンプルー、オクラ入りのサラダ、アーサーの味噌汁など、一緒に住んでいたヘアメイクさんも駆り出して手作りしまくってもてなしたエピソードも盛り込まれている。食へのこだわりは強く、またそれも手作りであることにとてもこだわっていて頭が下がる思いだが、こうした手作り志向からポカリでなくクエン酸水になったのだろう。
また知らないことを知っているというように返答するくだりが見受けられ『皆既日食見たよ事件』も起こるべくして起こったように思う。たとえばモデルになりたてのころ、別のモデル仲間から「例のカフェで待ち合わせね」と言われると、“例のカフェ”の場所が分からないのに「分かった」と言ってしまったり、ドラマ撮影現場で「ランスルー(リハーサル)いきます」と言われて、何のことかわからないのに聞けないままやり過ごし、他の共演者がそれに気付いて教えてくれたり、また『non-no』の専属モデルオーディションで好きなモデルは誰か、と聞かれたが、もともとnon-noを読んでいなかったので言葉に詰まり、その場でページをめくって「この人です」と答えたりしたという。「知らない」「わからない」というのがとても苦手に見受けられる。ところが「よく見せようと思っても、もともとうまくないのだから、小賢しいことをしても底が見えてしまう」と語ってもいて、本人はこれで等身大と思っているようだ。高校時代に打ち込んでいたバレーを、腰の故障で諦めることになったにもかかわらず、「カムイ外伝」で過酷なアクションシーンにプロ意識を持って臨んでいるところなども、アレッ、腰痛めて運動しちゃダメなんじゃなかったっけ…と不思議に思うところだ。