みずき 私もそれ、言われました! 「普通のOLさんはそんなに高いものは買わない」って。
あゆこ でも当時の私は純情で、全然おかしいとも思わずに「結婚したら、子供ができるかもしれないし、きちんと将来を考えないとダメだよ。水商売で金銭感覚がおかしくなったらいけないから、俺が管理してあげてるんだ」っていう彼の言い分に頷いていたんです。「私は子供で、お金を管理しきれないから、彼が代わりにやってくれてるんだ。なんて親切な人なんだろう」、と。
――大学卒業と共に、あゆこさんは水商売を辞めて昼職に就いたんですか?
あゆこ ええ、普通に就職活動をして、採用された企業に入りました。その会社で秘書能力検定を受けて、他にもいろいろ資格を取得できる職場だったので、スキルアップできて感謝しています。2年で転職して、別の企業の役員秘書に採用されました。給与面の待遇も年齢のわりにとても良くて、でも……。
――社会人になっても、旦那さんが家計をまるごと牛耳っている?
あゆこ そうなんです。相変わらず、私のお給与は賞与も含め、すべて彼に持っていかれてしまうんですね。26歳くらいで、さすがにおかしいなって思うようになって……でも彼に対して強く言えないんです。喧嘩になって、言い負かされてしまうのが目に見えているから。「お前はダメな女だ」「ひとりで生きていけると思っているのか?」って、いつも言われていたので、自分でもそう思っていました。
かえで ひとりで生きていけるに決まってますよね。あゆこさん、それだけ稼ぐ能力があるんだから。
――少しずつ旦那さんに対しての「あれ、この人おかしいぞ?」という気持ちが膨らんでいったのでしょうが、あゆこさんが離婚を決意する大きなきっかけはあったのでしょうか。
あゆこ 私、女友達も男友達もすごく少ないんです。というのも、夫が私の交友関係をきつく制限していたから。学生の頃から、「あんな奴と会う必要ない。お前までバカになる」とか、悪口を言われて、仲の良い友達をつくれなかったんですよ。でも唯一、彼と付き合う以前から細々と関係が続いていた幼馴染の女の子がいたんです。
彼女と久しぶりに会ったときに、「お姉ちゃんが、旦那さんからDVを振るわれていて、離婚するらしい」「旦那さんは、全然反省してないし、ただの夫婦喧嘩だって言っているみたい」っていう話を聞かされたんです。
私も小さい頃、お姉さんとよく一緒に遊んでもらっていたので、びっくりしました。お姉さんは、学生時代にはバレーボール部のキャプテンに選ばれるような、非常にしっかりした、姉御肌の女性なんです。男子とけんかして、泣かしちゃうようなタイプ。そんなお姉さんがまさかDVなんて、信じられませんでした。
幼馴染が言うには、結婚してから、お姉さんは、人が変わったように暗く、後ろ向きになってしまったと。「旦那さんは、お姉ちゃんにひどい暴言を吐いたり、怒ったりするらしい。お姉ちゃんは旦那さんに対して、いつもビクビク、オドオドしていてかわいそう」って言っていました。
幼馴染から、いろいろ話を聞くうちに、ハッとしました。彼女の言う「DV」って、そのまま私の夫にも当てはまるんじゃないか、って……。帰りの電車の中で“DV”“モラハラとは”ってキイワードで検索をかけて、最寄駅へ着いた時には、頭の中は大混乱でした。「彼はモラ夫に間違いない。でも、どうすればいいんだろう? って」彼が他の女性と浮気していることも私、知っていましたし。
かえで すごい急展開。
みずき でも、帰宅して何食わぬ顔で「ただいま~」って?
あゆこ はい、DVやモラハラに関する本やブログを読み漁って、こっそりと離婚に向けた手続きを始めました。女性向けの離婚相談窓口に電話をして、弁護士さんを紹介してもらったり。話し合っても、言いくるめられてしまうだけだから、彼には何も言わずに、新居を探し、調停の準備をして。家庭裁判所に離婚を提訴すると同時に、最小限の荷物をまとめて、姿を消しました。彼にとっては、青天の霹靂だったと思いますよ。私、当日の朝も「いってらっしゃい」って彼を笑顔で見送りましたから。
――あゆこさんの職場に、旦那さんが押しかけてきたりは?
あゆこ 転職しました。(あっさり)
みずき すごい行動力! え、これ、去年の話ですよね?
あゆこ 去年の夏頃ですね。今はとにかく、離婚裁判で無事に離婚を認めてもらえるよう、願っています。
(構成/水品佳代)
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