
新郎はなぜ逃げたのか、が気になる~(『SUMMER NUDE』公式HPより)
放送開始前から「夏の大三角形を描く恋愛ドラマ!」として注目を集めていた月9ドラマ『SUMMER NUDE』(フジテレビ系)が、8日、スタートした。初回視聴率は17.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好発進で、Twitterなどでも「イケメンと美女だらけで目の保養」「夏の恋したくなった~」と評判は上々。一方で、「ビックリするほどつまらなかった」「戸田恵梨香の無駄遣い」「アラサーのおっさんとおばさんが海でキャッキャって寒いわ」と酷評する声も……。
ストーリーは、海辺の田舎街で育ち、今も仲良く暮らしているアラサーの若者(?)たちの、恋愛群像劇。主演の山下智久は、小さい写真館で働くカメラマンで、3年前に失踪した美しい恋人(長澤まさみ)のことを忘れられない男を演じる。街の有力者の娘ゆえフリーター生活を謳歌している女性を演じる戸田恵梨香は、山下に10年片想いしており、それを公言しているが振り向いてもらえず。そして、結婚式の最中に新郎に逃げられ、レストラン店長という仕事も結婚に伴い辞していたためニート状態の「かわいそうな女」に、香里奈が配されている。
この街では、彼らが子供の頃から毎年、マドンナ的存在である女性(板谷由夏)の営業する海の家があったが、今年は彼女の出産に伴い、オープンが困難。そのため、山下らは「仕事のない料理人」である香里奈に、海の家の経営を依頼する。お願いをする立場でありながら、デリカシーのない発言を連発する山下に腹を立てつつも、しぶしぶ承諾して街へやってきた香里奈。ひと夏のロマンスが、幕を開けようとしている……。
――初回の展開を見るだけでも、山下はまだまだ元カノにぞっこんラブ状態なうえ、戸田のことを好きな同級生メガネ男子(窪田正孝)や、香里奈に一目惚れした友人男子(勝地涼)らが入り乱れ、「三角関係」どころではない恋愛模様が予想されるこのドラマ。
容姿はイケメンだけど性悪かつ女々しい山下、なぜモテモテなのか? 山下には「デリカシーなさ男」を演じてなお、視聴者をねじ伏せるイケメンパワー(=つまり、キムタクの持つ魔力)が足りないのではないか? 山下と恋愛を繰り広げるハズの香里奈と戸田は、どちらも気が強く男たちを上から目線で罵倒するキャラだが、これで物語が成立するのか? そんなモヤモヤが浮かんでは消え、また浮かぶような第一話だったが、特に「10年愛を貫く女」である戸田のキャラには、もっと健気な演出があっても良かったように思う。15歳当時から山下に一途な恋心を向けているということは、設定的にはおそらく処女。であるにもかかわらず、すれっからしの雰囲気が漂い、「本気で山Pを口説きたいなら、なんでそんな態度とってんのヨあんたッ!」と指南したくなったモテテク通の視聴者もいたのではないだろうか。
しかし初回のハイライトは、なんといっても、香里奈のスッピンだった。戸田と早々に打ち解けて、彼女の自宅に泊まった風呂上がりの香里奈。薄い眉毛に腫れぼったい目、顔の血色の悪さ、これぞTHE・スッピン!(もちろんファンデーションなどのベースメイクまでオフしているわけではないはずですが……) ビ●レのCMの高島彩や、タレントがブログにさらす「スッピンだよ~♪」画像を素顔だと誤解しているような層にも、「美女だって、こんなモンだよ」と納得してもらえる、そんな演出だった。
ただ、香里奈演じるサバサバ姉御系アラサー女子には、どうしても既視感がある。彼女が主演した2011年秋の月9『私が恋愛できない理由』で演じたキャラクターと、あまりにもイメージが重なりすぎるのである。気が強く真面目な性格、友人への気遣いは抜群、そして恋には不器用……。こうも似た登場人物を割り当てられてしまうのは、女優本人のせいではないが、どうしても演技が金太郎飴のようにワンパターンになりがちになってしまうことは否めない。さらに戸田が住んでいる広~い家も、『私が恋愛~』で香里奈がルームシェアしていた家を思い起こさせる……。
夏の海を舞台にした青春ドラマ、という点でいえば、16年前に放送された『ビーチボーイズ』がある。当時、反町隆史は23歳、竹野内豊は26歳だったが、二人とも高身長でがっしりした体格のためか、「反町と竹野内はすごく大人に見えた。『SUMMER NUDE』の役者は幼く見える」という意見もネット上には多い。名作と誉れ高き『ビーチボーイズ』のように、同作が夏ドラマの新たな金字塔を打ち立てることができるかどうか、二話以降に期待したい。
(文=清水美早紀)