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童貞さん、逃げてー!! キャリア女性が狙う「童貞婚」の傲岸不遜

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AERA 童貞婚活

(『AERA 7月8日号』朝日新聞出版 より)

 雌雄のある生物であれば、童貞/処女として生まれるのが自然の摂理であり、必然たるもの。とはいえ、童貞/処女が特別な価値をもっているのは人間界だけの習わしでしょう。

 例えば現代の日本においては、ある一定の年代を超えた童貞/処女がなんだか恥ずかしい存在、あるいは不自然なもののように扱われてしまいがちです。ただ、こうした価値観は人類共通の価値観として脈々と受け継がれてきたわけではありません。

 共和制ローマ時代まで遡ってみましょう。有名な政治家であり、文筆家でもあったユリウス・カエサルが記した『ガリア戦記』を紐解くと、ローマ人の敵であるゲルマン人の文化においては「一番長く童貞でいた戦士が絶賛された」……なんてことも書いてあります。このように、時代や土地によって童貞/処女の意味合いは異なるわけです。こうした童貞/処女に対する価値付けは、人間が、誕生からセックスが可能になる成熟期に至るまでに、何年もの時間がかかる生物であるがゆえに発生してきた慣習なのかもしれません。

生きるか死ぬかの瀬戸際において、童貞/処女の観念は無意味

 今度は人間以外の生物の「童貞/処女」観を見てみましょう。犬同士では「童貞ドッグ/処女ドッグ」だからといって「非童貞ドッグ/非処女ドッグ」から馬鹿にされるケースはなさそうです。いや、もしかしたら散歩ですれ違った犬同士が、人間にはわからない犬言語で「俺の縄張りにマーキングしてんじゃねえよ! 童貞ビーグルのくせに!」とか、処女ドッグから貫通済みのメスドッグへ「オスに色目使ってんじゃないわよ! 腐れビッチトイプードルが!!」とか、壮絶な罵倒合戦が展開しているのかもしれませんが、たとえそうであっても人間には知る由もありません。

 また、鮭のように産卵とともに死んでしまう、言うなれば「童貞 or Die」、「処女 or Die」な生物もおります。もちろん、鮭のなかには童貞/処女のまま、漁師に捕まって大量の塩をまぶされたのち、さまざまな流通経路を辿って食卓に並び、塩鮭として美味しくいただかれてしまう運命を辿るものもあるでしょう。自然界は厳しく、生きるか死ぬかの瀬戸際のなかでは、童貞/処女などどうでも良いハズなのです! 童貞とか処女とかにこだわってる人間は視野が狭い!!

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カエターノ・武野・コインブラ

80年代生まれ。福島県出身のライター。

@CaetanoTCoimbra