「童貞はとにかくイイ奴だから手なずけろ」
……とのっけから、なんだかよくわからない話が続いておりますが、よくわからないのはわたしの文章だけではなく『AERA』(朝日新聞出版)7月8日号における「キャリ女は童貞を狙え 見つけた福音のブルーオーシャン」という記事もよくわかりません。以下、箇条書きで記事をまとめますが、衝撃の論理展開に飲んでいるマンゴー・パッション・ティー・フラペチーノを吹き出さないように気をつけてください。
1. キャリ女(キャリア志向の女性)が結婚するなら童貞がオススメ!
2. キャリ女は、男性にグイグイリードされるよりも、結婚と仕事の両立を考えると癒されるほうが必要
3. イケメンは、リードする力があるが、癒しは足りない
4. 童貞(記事内では『ダサメン』『童貞』『オタク』はほぼ同義語です)は、リードする力はないが、女性経験が乏しいので目の前の自分に一生懸命になってくれる
5. その一生懸命さが癒し!
6. だから、童貞婚がオススメ!!
7. いつ、童貞を狙って婚活しますか?(今でしょ!)
8. 「でも、一生懸命なだけじゃ、意味ないんじゃない……?」
9. 足りない部分は、女性が育てれば良いんです!!
10. しかも、童貞は「次の女性にいく」という発想がないので、仕込めば一生懸命女性をもてなすようになる!
11. 「でも、童貞だとセックスが心配」
12. 童貞は研究熱心だからセックス名人にだってなります!!
13. でも、童貞だからってあんまりこっちの価値観を押し付けちゃダメだよ、相手の趣味も尊重してあげてね
14. ご清聴ありがとうございました
正直、突っ込みどころしかないのですが、とにかく女性側の童貞に対する上から目線がヒドすぎます。記事で紹介されているあえて童貞と結婚した「童貞婚」エピソードも、「オラオラ系イケメンと付き合ってたけど、童貞のほうが気を使わず楽」といったものから、「『わたしと結婚してよかった』と周りに言いまわるよう約束させた」など、イケメン相手ならまずやらないであろう要求まで、この結婚に男性側の幸福があるのか心配になってくるものばかり。
これには童貞が女性経験値ゼロであることを良いことに、セックスとか恋愛とかを体験させてやることを対価にして、男性を搾取するかのような強引さを感じてしまいました。
経済評論家の森永卓郎さんいわく、童貞は安定した「定期預金」とのこと。うーん……このコメントの意図もうまく読み切れませんが、女性側から提供したもの(セックスや恋愛体験)を元本に、童貞定期預金は、(少ないけども)決まった利益を積み上げていくものだ、ということなんでしょうか。しかし、自分たちが定期預金(という金融商品)呼ばわりされていることを童貞たちが知ったら「騙されるもんか!」という警戒心が働いてしまいそうですよね。
そうなると、女性側が『AERA』が言うところの「結婚のブルーオーシャン(競争相手の少ない広大な市場)」に飛び込もうとしても、拒否されること請け合いです。女性からのアプローチがどんなに素晴らしくても、男性の心のなかにいる横山光輝版『三国志』のキャラクターが「待て あわてるな これは孔明の罠だ」とつぶやいてしまうので、童貞たちは女性たちに食いつかないことが予想されます。童貞と取引したくともできない鎖国状態のできあがりです。さらに鎖国童貞たちの間では、自分たちを搾取しようとする女性への憎悪が募っていく、と考えるのが自然でしょう。
格下の男なら、素直に調教されるとでも?
そもそも疑問なのは、この記事のなかで童貞が「良い人」のレッテルを貼られている理由です。記事中の「童貞と結婚する七つのメリット」を見ても「妻に敬意を持って接してくれる」、「子煩悩な良いパパになる」、「妻に対して要求が多くない」、「家事・育児に協力的」……などなど「良い人」、もっと正確に言えば「童貞は女性に都合が良い人」であると決めつけられています。