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「女による女叩き叩き」の不毛感と、米と味噌汁による幻想

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「女同士の争い」を必要としているのは誰

 こうした問題を指摘することは簡単ですし、何より土岐山さんご本人の言葉選びの汚さが目立ちますので、土岐山さんを非難することも簡単です。

 ですが、こうした、「女による女叩き」「女による女叩き叩き」の不毛感、内ゲバ感、「少ない資本を奪い合う」景気の悪さは拭えません。

 土岐山協子さんは、元教員•元銀座クラブのママという経歴を経て「愛情料理研究家」という仕事をされています。「愛情料理研究家」という肩書きを持つ人のミソジニー(女性嫌悪)記事が炎上するのは確かに理にかなっているのですが、これを、「愛情料理研究論」としてではなく、「銀座クラブのママ」が、保守的でミソジニーの強いおじさん客に対するウケを狙ったセールストークと考えてみればしっくりきます。

 ミソジニーの強いおじさんも引くくらい女性の悪口を言うことで、おじさんの不満を過剰代弁しつつ、「保守的な母性愛神話」を全肯定する。つまり、「女は男と子供のために存在するのよ」というセールストークです。

 ホステスのお客さんは主におじさんですから、おじさんにウケるトークを磨く必要があるのでしょう。土岐山さんのミソジニーは、そうした営業トークの一つとして磨かれていったのかもしれません。

 そう考えると、「女による女叩き叩き」をするよりも、「女による女叩き」が必要とされる過程を考えることの方が有意義であるように思います。

 また、昨年の『24時間テレビ』内で放送されたドラマ『はなちゃんのみそ汁』や、『愛情料理研究家』という職業が求められる背景には、日本において食が多様化した結果、「『米と味噌汁』による幻想が共有できなくなってきた」ことへの揺り戻し(バックラッシュ)もあるように思います。

 日本では「米は一粒も残すな」「お米一粒に七人の神様」などという言説が道徳的に語られるなど、主食である「米」を神聖視する見方が強くありましたし、フードブロガー「イエス!フォーリンデブ」の人気など、「ノーと言わずにたくさん米を食べる人」を親和的に感じる土壌があるのではないでしょうか。それに、現在の与党である自由民主党は稲作農家を有力な支持基盤にしてきた政党です。

 食の多様化によって米の需要が減ることで、そうした米の神話や特権性が保てなくなると危惧する層があるのかもしれません。

 いずれにせよ、食事は、「美味しく楽しく(誰かが不愉快な思いをせず)」食べられれば、それで良いように私は思います。

■  柴田英里(しばた・えり)/ 現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。Twitterアカウント@erishibata

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」