篠崎愛は「バランスの奇跡」だった
時間ちょうどにライヴは始まり、拍手に迎えられてステージにあがった篠崎愛さん。もう素晴らしかったですね……。オーバーサイズのスウェットワンピースに、ニーハイのタイツ(どちらも淡いパステルカラーのマーブリングのような柄が入っている)というCDのジャケット写真の衣装そのままの出で立ちで登場されて、ワンピースの裾とニーハイのあいだにいわゆる「絶対領域」が生まれていたわけですよ。
グラビアでは水着の姿でばかりお仕事している方じゃないですか。で、みんな童顔巨乳ってところしか見てないでしょう。それが着衣でステージに上がると、それだけじゃないの。童顔・胸・絶対領域から露出している素肌、体のすべてが丸みを帯びていて、均整が取れている。思わず、脳裏に「バランスの奇跡」というジャン・コクトーの言葉が浮かびました。そこに感動してしまったのですね。美術品にたとえるならば、重要文化財の常滑灰釉壺のような均整美でしょうか。
ライヴもすごく良かったです。「歌ウマ芸能人」という枠じゃなくて、これはもうちゃんと「歌手」。しっかりヴォイス・トレーニングを積んでいる歌い方で、全然発声に無理がないし、発音も綺麗。楽曲も凝っていてカラオケ音源みたいなアレンジの楽曲を平気で出しているアイドル・グループとは一線を画すクオリティでした。圧巻だったのは、ロックバンド、女王蜂のアヴちゃん提供のバラード「微熱案内人」。アコースティック・ピアノ伴奏のしっとりした楽曲なんですが、篠崎さんの裏声がめちゃくちゃキレイで、本気で鳥肌が立ってしまいました。
握手会で得られる癒し
で、ライヴ後の握手会。初めての参加だったので「あれだけAKBグループの握手会に並ぶ人がいるんだから、さぞかしアイドルとの握手って特別なものなんだろうな」、「手を握られたら、すごく気持ち良くなってしまったりするのかもしれない」という想像を膨らませながら、列に並んでいたわけですが、実際に生・篠崎愛さんに手を握ってもらったら、結構、普通で。
いや、当たり前なんですけどね。手を握っただけで気持ち良くなってしまう、とか、どんな呪術師だよ、って話ですから。ただ、終わってから気付いたのは、彼女とのほんの数秒の握手に、私がすごく癒されたという事実です……。
他のファンの方たちは握手しながらなんか色々話しているんだけど、私は特に伝えたいことがなかったので「暑いですけど、頑張ってくださいね~」とか当たり障りのない言葉をかけただけです。でも、そのとき自分の口から異様に優しいトーンの声が出ていたんですよ。まず、それに驚いてしまった。握手が終わって列を離れてからも、頭がフワフワして、軽くテンションが上がってしまっている。たぶん、握手直後の私の脳波を測ったら、α波がでていたハズです。
あの感覚はなんだったのだろうか……。イベントが終わってから随分考えたのですが、いまだに判然としません。可愛い女の子と握手するだけで、人はあんな気持ちになれるのか……、あれがアイドルの力なのだとしたら、アイドルの力で平和が訪れるんじゃないか……とさえ思います(心なしか強面の巨漢男性ファンたちも良い顔になっていた気がするし)。
アイドルの力なのか、篠崎愛さんがスゴいのか。シングルの発売記念イベントはまだまだ続くようなので、【messy】の読者の方にも是非体験していただきたいと思います。あくまで予想ですが、あの癒しの力って性別関係なく効く気がするんですよ……。
■カエターノ・武野・コインブラ/80年代生まれ。福島県出身のライター。Twitter:@CaetanoTCoimbra
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