日本テレビで毎週火曜深夜に放送されている『徳井と後藤と麗しのSHELLYが今夜くらべてみました』。ある共通点を持ったゲストを3名招き、あらゆる角度から彼らを比較しては、MCであるチュートリアルの徳井とフットボールアワーの後藤がツッコミを入れたり、SHELLYが時にフォローを入れたりしながらゲストたちの意外な一面を垣間見ることのできるトークバラエティである。
番組名が無駄に長すぎるし、“麗しのSHELLY”の“麗し”って「何なの!?宝塚意識?」と未だに引っかかりを感じているので、『今夜くらべてみました』だけでいいんじゃないかと思うのだが、番組が開始されて今月で一年、番組名は長いままである。
番組名の前半部分をちゃんと覚えている視聴者はいったいどれだけいるんだろうか? 新聞のラテ欄にも長過ぎるから前半は削られてもはや『今夜くらべてみました』としか載ってないですよ!
そんな無駄に長すぎる番組名の『(略)今夜くらべてみました』が、7月9日の放送で迎えたゲストは、ホラン千秋・青田典子・篠原ともえの3名だった。この一見バラバラで共通点がまるでなさそうなイメージの3人から出てきた共通テーマは「トリオ・ザ・脱皮女」であった。“脱皮女”ってなかなかパンチのあるネーミングである。
青田典子と篠原ともえという、過去にもともと強烈キャラだった二人がそのキャラを脱皮したであろうことは、ワイドショーや他のバラエティ番組でもかなり取り上げられていたので、「確かに脱皮したもんだなぁ」と復習がてら見ていてさほど驚きはなかった。
青田典子は美女軍団を抱える芸能プロダクション“オスカープロモーション”から生まれたセクシーグループの“C.C.ガールズ”を経て、『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)の「格付けしあう女たち」のコーナーで “バブル青田”と呼ばれるキャラで活躍。ジュリアナダンスで暴れる負け犬キャラが定着して完全にオモシロ姉さんとして人気を博した。
しかし、2010年に歌手の玉置浩二との結婚によって芸能活動を一時休止し、裏方として夫のサポートに専念していた。活動を再開した現在では、甲斐甲斐しい奥さんとなって、かつての“バブル青田”のような荒々しさは消え失せてしまい、物足りなさを感じる脱皮となった。
一方、篠原ともえは個性的なファッションと明るいキャラクターの“シノラー”ブームで一世を風靡し、共演者から煙たがられるほどの元気娘であったが、しばらくテレビで見ないうちにすっかり痩せて綺麗な大人の女性へと変貌を遂げていた。しゃべり出したら、やはり不思議ちゃんの部分はしっかり残っていたものの、10代の頃のうっとおしいほどのはじけキャラからの脱皮には成功したようだった。
そんなアクの強い二人に対して、意表を突いた脱皮をかましてきたのが“ホラン千秋”であった。『NEWS ZERO』(日本テレビ)で、昨年の4月から今年の3月までキャスターを務めていたホランは、アイルランド人の父と日本人の母を持つハーフ美女で、青山学院大学を卒業した才女である。
キャスター時代には凛として真面目そうな彼女であったが、『NEWS ZERO』を卒業しバラエティ番組に出だした途端に全く違うキャラに脱皮したようだ。
ホラン千秋が答えた“くらべてみました”アンケートは以下の通り。
「私、これテレビで初めていいます」→「私、干物女です」
「一人でこっそりやってること」→「フェイスクリームを使いきる」(もったいないから、なんでも最後まで使い切ることにハマっているらしい)
「家でのマイルール」→「むくみ取りソックス・高校時代のジャージ・メガネ・ヘアピンを装着し、スッピンで過ごす」
おやおや? 意外である。華やかな芸能界にいる24歳の若い女性にしては、地味な日常なのでは? キリっとしていたあのキャスター時代からはまるで想像がつかない。
実家暮らしだというホランに後藤が一人暮らしを勧めたが、「片付けとかが苦手」「本棚から出した本は(片付けるのが)めんどくさいから違うところに散らばってる」「(本だけではなく全体的に)ほどよく部屋はちらかってる」とニヤけながら干物女ぶりを披露し、後藤に「日本一地味なハーフ」とツッコまれる始末。
あんなにはっきりした顔立ちの美形ハーフで才女でニュース番組のキャスターまで務めていた彼女は、綺麗に整頓された部屋で肌触りの良さそうな部屋着を纏い、アロマキャンドルを灯しワインでも飲みながらゆったりとした時間を過ごしていそうなイメージがありそうだが、まるで正反対。ワインどころかアルコールはまるで飲めないそうだ。う~ん、残念! なんだかもったいない!
綾瀬はるかが2007年に主演して大ヒットしたドラマ『ホタルノヒカリ』(日本テレビ系)の主役・雨宮蛍ような、会社ではバリバリ働きデキル女であるが家に帰るとゴロゴロダラダラしている干物女そのものではないか! 蛍はビールが大好物でオヤジキャラも持ち合わせていたが。
ホラン千秋は干物女のわりには(むくみ取りソックスの)“メディキュット”は履いて、美脚は気にするんだと思ったら、なんと片方を無くしたらしく、新しく買うのがめんどくさいから片方ずつ3時間ごとに足を換えて使用しているそうだ。それを聞いたSHELLYは「わ~、本物(の干物女)だ~!(ヤバい~)」と引いていた。
今どき、近所のドラッグストアなどでも簡単に手に入るであろうメディキュットをお金があっても買いに行こうとしないズボラ感。この人、そのうち普通の靴下も左右違う柄を履いても気にしなくなるんじゃないだろうか……。
また、難しそうな本を読んだりしそうなイメージだが、マンガが大好きでたくさん読むらしく、昔から好きなマンガは完全版で買い直したりするそうだ。マンガオタクの匂いも醸し出して来たぞ~。
あげく、「休日は下界をシャットアウトして、ダイニングキッチンで(飲み物食べ物がすぐ取れる席に座り)冷蔵庫のそばから動かず家でゆっくり過ごしたい」「テレビに向かって話しかけている」「移動する時は弟の自転車を借りる(しょ、庶民的~!)」「趣味は貯金で、小学校の時から貰ったお年玉は一回も使った事がない(う、うそ? 親が何でも欲しい物買ってくれたの?)」「貰ったお年玉袋も全部持っている」「空になったお菓子の缶を集めている」「ハーフなのにハイタッチやハグが苦手」とハーフで華やかなイメージからほど遠いほど見事に地味な生活を送っているようである。地味どころかネクラなイメージ?
「彼氏もいないし、出会いもないし、色々諦めて家から出る事も諦めちゃう」と干物女全開のホランであった。むしろ干物女というよりも、引きこもりに近い症状がでているのでは!? ファンじゃないけど、ホランがとっても心配!
「どうしたんだクールビューティホラン!」と男性ファンが見たら落胆しそうな番組内容であった。『NEWS ZERO』時代の凛とした佇まいでニュースを読んでいた彼女は、どうやらかりそめの姿だったようだ。
そんな地味なハーフのホランが憧れているのがこの番組MCでもあるSHELLYだった。昔ホランが情報番組でMCを担当していたことがあるのだが、その前任がSHELLYだったそうで、非常に尊敬しているそうだ。
そのあこがれのSHELLY先輩への質問が「笑いの勉強はどうやってしてたんですか?」「(お笑いで)誰か注目してた人はいましたか?」と必死に笑いについて参考になることを聞き出そうと食らいついていた。プライベートでは完全な干物女であるが、仕事となると驚くほど貪欲である。そのガツガツ感にスタジオは大爆笑していたが、ホランの眼差しは真剣であった。
近年、芸能界やモデル業界ではハーフタレントが増加し飽和状態なまでに様々な番組で見かける。ベッキー・ローラ・道端三姉妹・ダレノガレ明美……などなど、まさにハーフタレント戦国時代に突入しているのだ。ハーフであることが持てはやされる時代は終わってしまった。この戦の中で、勝ち残って行くのはよほどの個性かスキャンダルでもなければ難しいだろうと思う。
今回ホラン千秋はそんな戦国時代で戦い抜いて行く為の武器として、自らの真の姿である“干物女キャラ”をさらけ出し、“日本一地味なハーフ”という称号を得ることができた。
たとえ男性ファンが激減したとしても、番組共演者にどんなに引かれたとしても、自分のホントの姿を共感してくれるかもしれない女性ファンや、面白がって起用してくれるであろう番組スタッフへ向けて彼女は最大限のプレゼンテーションができたのではないだろうか。ホラン千秋の覚悟を感じた夜であった。
(脱皮視聴・文=テレ川ビノ子)