処女懐胎シミュレーターはインターネット上で公開されており、アメリカの民間遺伝子解析サービス「23andMe」のゲノムデータをアップロードすることで、誰でも自分の子どもをシミュレーションすることができるようになっている(いずれも英語版のみ公開)。
実際に試してみると、生まれる子どもの体質について、以下の三項目に分けてまとめられていた。
・良いこと(例:「体臭が少ない」「寿命が長い」)
・悪いこと(例:「○○病のリスクが高い」「○○の薬が効かない」)
・どちらでもないこと(例:「色黒」「まっすぐな髪」「パクチーは石けんのような味だと感じる確率が先天的に高い」など)
現代日本では、日本産婦人科学会のガイドラインにより、法律的に結婚している男女にしか人工授精が認められない。そのため、異性と結婚せずに妊娠・出産することを望む場合、女性は一般男性からの個人的な精子提供に頼ってきた。後者には感染症のリスクや、精子提供をした男性が後から親権を主張してくる可能性も指摘されてきた(参考:NHKクローズアップ現代)。
また独身者の子育てに対する偏見も根強く、制度上の婚外子差別も問い直されつつはあるものの未だ残っている。そうした中で、今後、社会はどのように新陳代謝していくのだろうか? 「処女懐胎シミュレーター」のようなメディアアート作品を通して、私たちが実際に自分の卵子と精子から生まれた子どもと“会ってみる”ことも、長谷川さんの言葉を借りればよいマッサージになるのかもしれない。
▼長谷川愛さん公式サイト
http://aihasegawa.info/
▼処女懐胎シミュレーター(原題Virgin Birth Simulator)
http://aihasegawa.info/?works=virgin-birth-simulator
長谷川愛(はせがわ・あい)
アーティスト。英国王立芸術学院デザイン・インタラクションズ修士課程修了。高校在学時より美術コンクールへの入賞を重ね、現在は米国マサチューセッツ工科大学メディア研究室を拠点に活動。“未来を拓く”をコンセプトに、現代社会が抱える課題をアートとデザインの視点から捉えなおす作品を手掛ける。
公式サイト : http://aihasegawa.info/ twitter : https://twitter.com/Ai__Hasegawa