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ママカーストは本当に「女同士の争い」なのか!? 同調圧力やマウンティング合戦の裏にあるものとは

【この記事のキーワード】

桃山商事のクソ男撲滅委員会 毎日流れてくる膨大なニュースの数々。その中には、“男のクソさ”が原因になっていると思えるものも少なくありません。そんなニュースを勝手に取り上げながら、桃山商事のメンバーが元気に言いがかりをつけていきます!

【今回のPick upドラマ】

同調圧力やマウンティングが満載の“ママカースト”ドラマ

清田代表(以下、清田) 今回は、TBSで放送中の火曜ドラマ『マザー・ゲーム』を取り上げたいと思います。

佐藤広報(以下、佐藤) いわゆる“ママカースト”を描いた話題作ですね。独身男の我々にとっては、最も縁遠い世界のような気もしますが……。

清田 でも、このドラマには「クソ男撲滅」のためのヒントがいろいろ詰まっているように感じる。我々なりに考えたことを語っていきましょう。

佐藤 放送を見て、すでに軽く結婚恐怖症になってるけど……がんばります。

清田 まず物語の設定なんだけど、これは「お金持ちが集う名門幼稚園に、年収250万のシングルマザー・蒲原希子(木村文乃)が、縁あって子どもを通わせることになる」という話で。

佐藤 希子は離婚後に子連れで実家へ戻り、そこで弁当屋を営む女性なんだよね。普通、働くシングルマザーだと幼稚園より保育園に預けることが多い(※幼稚園の降園時間は基本的に保育園より早く設定されているところが多いため)みたいだけど、希子は自営業だから仕事を抜け出してお迎えに行ける。だから、幼稚園でも待機児童の問題に直面していた希子には「入れるだけラッキー」という話のはずだったんだけど……。

清田 その幼稚園は専業主婦かつセレブママたちの巣窟で、まるで異世界に紛れ込んでしまった感じなんだよね。しかも、希子は園長先生のコネで入園したので、周囲から完全に不審者扱いで。

佐藤 そして、そこは「夫の年収」がそのまま身分の序列に直結している恐ろしい社会で、すでにママカーストができあがっていた。

清田 そのトップに君臨するのが、年収5億3000万の小田寺毬絵(壇れい)。不動産・ホテル事業を営む大企業の社長令嬢で、タワーマンションの最上階に暮らすスーパーセレブ。で、それに続くのが年収3000万の開業医を夫に持つ矢野聡子(長谷川京子)と、大手広告代理店に勤める年収1800万の夫を持つ後藤みどり(安達祐実)。

佐藤 その3人がカースト上位で、もうひとりの中心人物が神谷由紀(貫地谷しほり)。彼女の夫は役所勤務で年収750万だから、このママカーストではかなりの下位。実は希子の幼なじみなんだけど、セレブママについて行こうと必死になっていて、その事実を隠している。

清田 序盤では、そんなママカーストの中で起こるいざこざがドラマの主軸だった。同調圧力、派閥争い、マウンティング合戦……と、簡単に言えば“希子いじめ”なんだけど、例えば自転車のカゴに「出て行け!」と書かれた紙を詰め込まれたり、息子(蒲原陽斗/横山歩)の描いた絵を隠されたり、「希子さんはこの幼稚園にふさわしくない」と退園を求める署名運動を起こされたり……。

佐藤 実話を元にしたエピソードもあるみたいで、マジで「ママカースト怖ぇ!」って思ったわ。でも、当の希子は負けん気と正義感が強い性格で、圧力に屈しないんだよね。しかも、間違ってることにはビシッとNOを突きつける。それが「悪のセレブママVS正義のシングルマザー」というわかりやすい構図になっていて、まるで女版『半沢直樹』を観ているような気持ちよさがあった。

清田 そうやって希子が陰湿なママカーストをバッサバサ斬っていくのかと思いきや……意外にも、そういういざこざを描いていたのって序盤だけで。

佐藤 途中から「セレブママVS希子」の対立構造が崩れていくんだよね。

清田 実はどの母親もいろんな問題を抱えていることがわかってくる。例えば小田寺毬絵には引きこもりの息子がいるし、矢野聡子は姑の嫁いびりに悩まされている。また、後藤みどりは夫の浮気やモラハラに苦しめられていて、神谷由紀は自分に自信が持てず、劣等感に苛まれている。

佐藤 最初は、そのストレスが希子に向かってたんだよね。園長から優遇され、まわりに同調せず、しかも息子が何かと優秀な希子が許せず、それが嫌がらせにつながっていたと。

清田 そうだね。「何で希子さんばっかり!」「私だっていろいろ我慢してるのに!」って気持ちが背景にあったんだと思う。でも、それぞれが抱える問題はやがてママ本人や子どもたちを蝕み始め……むしろ希子は、彼女たちを支えたり一緒に戦ったりする存在になっていく。

佐藤 だからこれは、単なる「ママカースト怖ぇ!」ってドラマではないんだよね。

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清田代表/桃山商事

恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆などを通じ、恋愛とジェンダーの問題について考えている。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)や『大学1年生の歩き方』(左右社/トミヤマユキコさんとの共著)がある。

twitter:@momoyama_radio