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ママカーストは本当に「女同士の争い」なのか!? 同調圧力やマウンティング合戦の裏にあるものとは

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責任を母親に押しつける耳栓夫とモラハラ夫

清田 例えば、矢野家は代々続く開業医の家で、聡子はかつてそこで看護師をしていたんだよね。で、姑の中には「高卒の看護師がウチの息子にうまく取り入りやがって!」という思いがあって、何かと嫁をいびりまくる。

佐藤 でも夫は、そういう場面になるといつも耳栓をするんだよね。「何か都合が悪くなると聞こえないふりして逃げる男」って、前にここで取り上げた『問題のあるレストラン』でもさんざん描かれてたパターンですね……。

清田 こういう場面で夫に逃げられると、妻は完全に孤立してしまう。これはホントにつらいと思う。でも聡子は、必死に「矢野家にふさわしい嫁」になるための努力を続けるんだけど、その“ひずみ”が、子どもの体調にモロ影響しちゃうんだよね。

佐藤 祖母によるバイオリンのレッスンが厳しすぎて、腹痛や嘔吐をしちゃってたからね……あれは見ててつらかったわ。

清田 また、後藤みどりはかつて夫と同じ広告代理店のトップ営業だったんだけど、妻の話は聞かない、家事も育児も全然やらない、おまけに若い女子社員と浮気をしているという夫からモラハラを受けまくり、すっかり自信をなくしている。

佐藤 「母親失格だ」とか、「俺の金で暮らしておいて、俺の言うことが聞けないのか?」とか、モラハラ夫のテンプレみたいなことを平気で言うからね!

清田 それでみどりは孤独を深め、娘が通うスポーツ教室のコーチ(上地雄輔)になびいてしまうんだけど、それが夫にバレてしまう。で、激怒した夫はみどりと娘を引き離す……。

佐藤 それで娘は、さみしがってこっそりママに電話したりするんだよね。でも、モラハラ夫はそれを見つけ、電話を取り上げて切ってしてしまう。あれもしんどいシーンだった。

清田 このように、とにかく問題なのは「夫婦の不安定な関係が、子どもにモロ悪影響を及ぼしちゃってる」ってとこだと思う。子どもたちは親の気持ちや家庭内の空気を敏感に感じ取っていて、それらを背負い込み、精神や体調を壊してしまっているわけで……。

佐藤 めっちゃわかるわ。親が機嫌悪かったりすると「自分のせいかな?」って気持ちになってしまった経験のある人も多いと思う。

清田 子どもに背負わせるのはあまりにしんどいよね……。それは本来、大人が何とかすべきものだと思うので。でもさ、本来なら、嫁をいびる姑にも、耳栓夫にも、モラハラ夫にも、責任は当然あるわけだよね? だけど、なぜかドラマでは、すべてが「母親のせい」になっちゃってるじゃない?

佐藤 ああ、確かに。子どもの具合が悪いのも、子どもが勉強について行けないのも、子どもが友達を泣かせちゃうのも、全部「母親のせい」。さらに、家庭の空気が悪いのも、夫が浮気するのも、家計が苦しいのも、全部「母親のせい」になってるもんね……。

清田 これはさすがにバランスがおかしいよ。家事は完璧にやれ、身なりはいつも綺麗にしてろ、夫に尽くせ、姑に気を遣え、人づきあいをサボるな、人様に迷惑をかけるな、自分の欲望は捨てろ、子どもに100%愛情を注げ、ひとつでも欠けたら母親失格だ……って、どんだけ母親に背負わせるんだって話だよね。

佐藤 それって現実世界でもめっちゃ起こってることなんだと思う。テレビドラマという超メジャーな場で扱われてるということは、それが世間的に広く共有される題材だってことの証拠でしょ。だから、これは決してフィクションだけの話じゃないはず。

清田 そうだね。本当は様々な人間関係や社会的背景が複雑に絡まりあって生まれている問題なのに、すべてが「母親のせい」にされてしまっている。そして、母親自身も自分で背負いすぎてしまい、その無理が、苛烈なママカーストや子どもへの負担という形で出てしまっている……。このドラマは、そういう状況に対する異議申し立てなんだと思う。

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清田代表/桃山商事

恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆などを通じ、恋愛とジェンダーの問題について考えている。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)や『大学1年生の歩き方』(左右社/トミヤマユキコさんとの共著)がある。

twitter:@momoyama_radio