高校時代に自分がゲイであることを友人にカミングアウトしはじめ、早6年。まだ一人しか男を知らなかった純情ゲイ少年が、昼ドラをすりつぶしたような恋愛を越え、今ではすっかりオンボロなオカマになりました。顔面劇場まるだしちゃんです。男か女かなんて二元論では語れない、ブスロジーを提唱する私はぴっちぴちの大学生(肌年齢は限界)。どうぞよろしくお願いいたします。
梅雨もいつの間にか空け、やれ海だ、やれセックスだと身体を絞りだすも、結局夢半ばでだらしない贅肉を携えて今日を生きる皆さん、ブスな妖怪に取り憑かれてはいませんか? ここでいう「ブス」は、不遇の身体的特徴を指してるのではないのです。どんなに見てくれが良くたって、オシャンティなキャッフェーで優雅な午後を過ごしたって、根性が「ブス」ならば、 そのほころびはいつの間にか身をも心をも蝕み、人をブスな妖怪にしてしまうのです。くわばらくわばら。
今回は「詰問妖怪オシダシババア」です。
先日、友人からこんなことを相談されました。
「最近彼が冷たいんです」
あら、よく聞く話じゃない。
「それで、どう冷たいの?」
「前ほど『好き』って言ってくれなくなったんです」
(来た! 来たわよ! だいたいこういう女って、最初は彼が悪いみたいな前置きを必ずするの! 落ち着いて思い出してみて。アナタの気持ちが前のめって、彼にとってうっとうしいことをした覚えがあるんじゃなくって?)
という心の声に静かに蓋を。がしかし、すでに彼女の脳天にはブスのブの字が点灯中!
「前は何も言わなくても好きって言ってくれていたのに、今じゃ『私のこと好き?』って聞いても答えてくれなくて……」
出たーーーーー!!!!!! で、出たわ!!!!!
彼女の脳天に出ているブスの字が完全に点灯しました!! 彼女の点灯式ならぬブス灯式は一瞬のうちに行われ、迷える舟人に導きの光を出す灯台のようにその路を照らしています。
さらに続きます。
「もう私のこと好きじゃないんだと思います」
きゃああああああああ!!!!! この女、迷えるブスたちの先陣を切って路を切り開くモーセ! モーセよ! ブス界のモーセ! その台詞はモーセの手刀のごとく、ブスへの道程を阻む海を割ったわ!
「どうせ彼に『わたしのこと好き?』『わたしのどこが好き?』『どのくらい好き?』って会うたびに聞いたんでしょ? そういうのは自然とポロっと出るからいいのよ。聞いた分だけ価値は下がるし、そんなことしてたら、彼の中のめんどくさいアワードのグランプリ総なめよ?」
「でも、好きなら答えられるはずじゃないですか」
割ったあああああああああああ!!!!! 十戒を叩き割ったあああああああ!!! まさにモーセ! モーセの化身よ! ブースね!(原型)
その後も彼女は私の十戒を譲り受けることなく、延々と十戒を割りつづけました。今日の妖怪オシダシババアは手強かったわ~。セクシー除霊師まるだしの力を持ってしても、成仏させることが叶わなかったわ。除霊失敗よ……!
————
「詰問妖怪オシダシババア」……
【彼氏にことあるごとに『わたしのこと好き?』『わたしのどこが好き?』『どのくらい好き?』と聞いて、彼が応えなくなると、「私のこと好きじゃないのね!!!」と大騒ぎするヒステリックな妖怪。押し出しを得意技としていた力士の霊であるという説が有力であることから、この名が付いた。「妖怪大図鑑」参照】
————
この妖怪、厄介なのが、彼女の中では「彼が好きって言ってくれない」→「問いだしても彼が好きって答えてくれない」→「彼は私を好きじゃない」の論理を確立しているの。彼の「一緒にいて安心できるやつといたい」視点を完全に無視してるのよ。
まだ男は仕事や友人関係で男としての満足感を満たし、女は男からもらった愛で満足感を満たすという構図がまだ残ってる証拠。女には、料理や趣味、おしゃれも全て、最終的にその根本が彼に帰依するって人がいるのよね。わからんでもないけどね。
もしかして、私に憑いてるかも……! って貴女は、そのありあまる承認欲求を女友達で満たしてみるのも吉ね!
もっと自分のために女を楽しむわよ~!
■顔面劇場まるだしちゃん /(@toyamarudasi)爆発寸前のオカマ。北海道の僻地から湧いてでたセックスシンボル。イラストレーター、グラフィックデザイナーとして活動する傍ら、全てのセクシュアリティの人のためのブライダルLetibeeの代表として活動している。お尻が突き出ているという一身上の都合によって、高校時代のあだ名は「ケンタウロス」
【ブス妖怪大図鑑バックナンバー】
001/昔の男にヤリ目で呼び出される「妖怪側室ババア」
002/オイシイところを全て持っていく、アヘ顔の「妖怪クリトリババア」