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『OLの総合慰安施設』プランタン銀座とダイバーシティ

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(C)柴田英里

(C)柴田英里

 先日、プランタン銀座に行きました。

 近くで用事を済ませた後、夕立を避けるために入ったのですが、久しぶりに入ったプランタン銀座は、コスメカウンター、ネイルサロン、リラクゼーション、ちゃちゃっと買いたい通勤服や結婚式の賑やかし(お呼ばれ)ワンピ、ジムウェアにレディースユニクロ、サプリメントショップ、海外のお洒落100均にハートの形のスイーツショップなどなど、ぎっしり無駄なく設計された『OLの総合慰安施設』のようでした。

 プランタンのセレクトは、「保守的な男性ウケ(別名:王道モテ)」感が色濃いです。

 それが一式ちゃちゃっと揃ってしまう空間というのは、「女は常に男に求められていなければなりません病」的息苦しさもあるのですが、反面、「女の子の制服・コスプレ」的な快感もあるのではないかと思いました。

 自分の稼いだお金で、社会から押し付けられがちな「女性としての規範」の優良株にコスプレするようなアイテムたちを、手早くサクッと全部手に入れられる空間というのは、自分の心という苗床が腐ったり虫がつかないように応急処置をするための「慰安美容の駆け込み寺」に見えます。同時に、社会から押し付けられた「女性としての規範」なんて、鼻をかむように、痰を吐き捨てるように、軽々と征服(コスプレ)できる、取るに足りないものですよ。と宣言するような清々しさを感じました。

 ぎっしり無駄なく設計された『OLの総合慰安施設』プランタン銀座を徘徊していると、ふと、以前messyで、心のつながりを謳ったヘテロ女性向け風俗「ヒメシエスタ」の営業停止に伴う記事を読み、風俗が「心のつながり」を最大のウリにすることは爆弾を内包しているなー、と思ったことを思い出しました。

 ヘテロ女性向け風俗が「心のつながり」を最大の売りにすることの背景には、かなり深い闇があるように思います。

 ひとつは、今現在を含め、長きにわたり女性の性がタブーとされてきた背景があること、もうひとつは、端的に性欲を発散するよりも、「恋人」という関係性を所有することが、「女性としてのステータスが高い・より良い女性の性欲」とされがちなことです。前者に関してはヒメシエスタは積極的に「タブーなんておかしい、解放していいんだよ」とメッセージを送りましたが、一方で後者の「恋人感」すなわち心のつながりをウリにすることで利用女性に「言い訳」をさせてあげる、というやり方をしていたと思います。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」