連載

『OLの総合慰安施設』プランタン銀座とダイバーシティ

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 「(疑似)恋愛欲」を「性欲」に、あるいは「性欲」を「(疑似)恋愛欲」に偽造販売するサービス業において、客と従業員の間にトラブルが起こることは、必然ではないでしょうか。ヘテロ男性向けに女性がサービスをする性風俗でも、男性客が女性への恋心を募らせ「困った客」化する事例はいくらでもあります。とはいえ、特定の嬢に執着せず「射精→スッキリ!」で帰って行く、端的な性処理として風俗を活用する男性が大半でしょう。

 女性向け性風俗サービスが、男性向けのそれよりも圧倒的に少ないことは自明です。しかし「心のつながり」をウリにする女性向け風俗よりも、ネイルサロンやリラクゼーション、コスメカウンターの方が、「あー、なんかくさくさすんな〜→はいスッキリ☆」という単純な快楽を与えるサービスとして機能しているのではないでしょうか。それらの女性向けサービスは、男性向け風俗に近いような気がします。

 最近、漠然とではありますが、「より良い“異性愛社会”における男女平等」を求めるような言説に対して、「セックス=心のつながり」に回収しすぎではないのか? と感じます。

 人間の欲望はもっと千差万別なのに、「一つの理想」だけに当てはめようとするのは、中世のキリスト教における罪のないセックス「出来るだけ快感を得ずに無駄なく妊娠しろ」というような規範の再生産にしか向かわないでしょう。

 今の日本の、「LGBT支援、同性婚賛成!!」と言いながら、「恋愛に興味のない若者はけしからん!」と説教する(セクシャルマイノリティの中には「アセクシャル(無性愛者)」や「ノンセクシャル(非性愛者)」だっているのです)風潮はどこか排他的です。

 つまり、「包摂できるマイノリティは認めるが、そうでないマイノリティは排除する」というような空気が蔓延しているように思うのです。

 私はやはり、女性向け風俗や女性の性の解放、そしてダイバーシティ(多様性)を考えるなら、「心のつながり」ではなく、「はいスッキリ☆」を肯定するべきではないのかなあと思います。

 そういった意味でも、プランタン銀座は興味深い空間でした。

 プランタン銀座の中に渦巻くピンクベージュの世界が、「保守的な男性ウケ(別名:王道モテ)」という、父権性とマチズモ(男性優位思想)にまみれた強制異性愛のシステムという枠内でしか語られないことは、きっととても不幸なことであるなあと思います。

■  柴田英里(しばた・えり)/ 現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。Twitterアカウント@erishibata

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」