また、広瀬が声優として主人公を演じた細田守監督のアニメ映画『バケモノの子』の公開も7月11日に控えているが、こちらはなんと、彼女の「降板」を求めるオンライン署名活動が発足した(現在は終了)。社会を動かす署名サイトを標榜する「Change.net」上で、前述の『とんねるず~』での彼女の発言が「職業差別発言」「スタッフを蔑視した発言」であるという理由から署名が募られ、およそ280人が賛同。すでに完成披露会見も済んでおり、現状で声優変更の可能性は限りなく低いにもかかわらず、お祭り騒ぎに乗りたい人々が集ったのだろうか。コメント欄も解放されているがそこに書き込まれた内容はあまりにひどい。広瀬を「汚れた心の持ち主」と罵倒したり、「許せない」「万死に値する」など断罪する言葉が並ぶ。それこそ天上界から見下ろしているのかというほど異常な上から目線の持ち主たちである。これではまるで、彼女が火炙りにされているような状態だ。
「すずちゃんは純粋でピュアな子なのに、どうして叩くの?」なんて言うつもりはさらさらないが、誹謗中傷を書き込む当人たちはこの異常性に気付かないのか、それともわかっていてネタのつもりで書き連ねるのか、はたまた物語をメタ的に俯瞰して見ているつもりなのか、いずれにしろ不可解である。広瀬本人は負けん気の強い性格であると公言しているので、この程度のバッシングを気にしないかもしれないが、周囲のスタッフは過剰にガードするでもなく持ち上げるでもなく、適切な配慮で彼女を守る必要があるだろう。
それにしても、剛力彩芽(22)がやたらとテレビドラマやCMに出演しまくっていた時期頃から盛んに唱えられ始めた「ゴリ押し」という呪文。これはつまり、オーディションで役を獲得するようなパターンのみがタレント本人の実力であり、芸能事務所と放送局のパワーバランスや広告代理店の思惑など“大人の事情”が絡むと途端にすべてが胡散臭くなるのでけしからん……ということだ。ゴリ押しが嫌われる背景には、「正直者が損をしてはならない」「努力が報われる世の中であってほしい」という、AKB48高橋みなみ的な(AKBというグループ自体に正直だの努力だのが認められるルールがあるものか知らないが)願望が蔓延しているのだろう。バカ正直なほうが好かれる世相であるにもかかわらず、バカ正直に「音声さんや照明さんってなんでその仕事をしようと思ったのか気になります~w」と話した広瀬すずは叩かれるわけだが。
(清水美早紀)
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