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「ヤリマン」は男の精神安定剤!? “いろんな人とHしちゃう”ヒロインはなぜ脅威なのか

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「ダメ」の理由ではなく、「イヤ」という感情から考える

清田 そもそも、なぜ恋人以外の人とセックスしちゃダメなんだろうか?

佐藤 いや、なぜも何も、普通にダメでしょ。一応そういう暗黙の了解のもとに恋人関係を結ぶのが現代の恋愛なわけで。

清田 例えばこれが婚姻関係だったら、民法770条で「不貞行為だからダメ」と規定されているみたいなのね。つまり、それは刑事罰には問われないものの、損害賠償請求可能な違法行為となる。でも、恋人同士にそういう明確な決まりはない。だから、厳密にはダメと言えないのかもしれない。

佐藤 う~ん。

清田 桃山商事では彼氏の浮気に苦しむ女性たちの話をよく耳にするので、個人的にもダメなことだと思うし、「相手を傷つけるから」「信用を失うから」「病気の危険性が高まるから」「社会が保てなくなるから」などなど、本やネットにも様々な観点からダメの理由に関する説明があった。だけど、ここで考えるべきはそういうことじゃないような気がしていて。

佐藤 というと?

清田 どこまで行っても「ダメ」の根拠は正直わからないんだけど、一個人として、恋人が自分以外の人間とセックスしたらやはり「イヤ」だなとは思う。だから、根拠を理屈で探るより、何でイヤなのか、己の心を掘り下げた方が有効なアプローチではないかと思って。

佐藤 あ~、なるほど。それなら自分自身の問題だから確信を持って語れるかもね。でも、何かそれ、自分のカッコ悪い部分がいろいろ露呈しそうで怖いな……。じゃあ、清田代表は何でイヤなの?

清田 マンガを読みながら感じたのは、「もしかしたら俺は、自分以外の男を“汚い生き物”だと思っている節があるんじゃないか……」ということで。

佐藤 どういうこと? 多くの男性を敵に回しそうな発言だけど。

清田 私、男同士のキスが絶対にできないんですよ。ホモセクシュアルではなく、ホモソーシャルな意味でのキスね。飲み会とかでふざけて男同士がキスしたりする場面もあるでしょ? あれがまったくできない。もっと言うと間接キスも苦手で、極力避けようとしてしまう。

佐藤 確かに昔から代表ってそういうとこあるわ。サッカーの試合でペットボトルの水をまわしても、絶対に口をつけないもんね。その一方で、代表は男のチンコや身体に触ることは躊躇ないじゃないですか。その線引きがイマイチ謎なんですが。

清田 そこは自分でもよくわかんないんだけど……とにかく、恋人が自分以外の男とセックスしてるシーンを想像すると、どうしても相手の男が汚らしい存在に思えてしまい、女性側が“被害者”のように見えてしまう。実際にこのマンガでも、山下以外の男はキモそうなオッサンだったり、ダメそうな大学生だったりと、ある種の“嫌悪感”を催させるような描写になっているんだけど、自分もこういう感じの想像をしてしまうところがあるなあって。

佐藤 それは何かちょっとわかるような気がする。「清らかな存在である自分の彼女が、気持ち悪い男たちに犯される」みたいなイメージね。

清田 そうそう……。だから、変態おじさんが小谷の全身をべちょべちょに舐めるシーンとか、見ていてホントつらかったわ。でも、当の小谷はそれに強い快感を覚えていて……読んでていろいろ混乱しました。

佐藤 なるほど。要するに、男同士のキスができないってことと、彼女が他の男とセックスしたらイヤだってことが、根っこの部分でつながってるってわけか。

清田 うん。もっとも、その感覚の中にはどこか「ホモフォビア(同性愛嫌悪)」や「ミサンドリー(男性嫌悪)」がビルトインされてるような気がしなくもないので……これを機に自己省察を深めたいと思います。

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清田代表/桃山商事

恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆などを通じ、恋愛とジェンダーの問題について考えている。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)や『大学1年生の歩き方』(左右社/トミヤマユキコさんとの共著)がある。

twitter:@momoyama_radio