
Photo by Nathan Forget from Flickr
歌人・俵万智さんの歌に「一枚の膜を隔てて愛しあう君の理性をときに寂しむ」というのがあります。かなり前の作品ですが、初めてそれを目にしたとき、いろいろと背景にある男と女の事情に思いをめぐらす前に、ストンと胸に落ちたことを覚えています。
ふたりの関係が不倫だからか、はたまた単に男性側に子どもを作る意志がないがゆえか。望まない妊娠を避けるためのコンドームを男性は欠かさない。一方の女性が妊娠を望んでいるかどうかはわかりません。でも、望んでいなかったとしても、ゴム1枚の隔たりを切なく感じる気持ちに、私はシンパシーしかありません。女性にだって「この人とならナマでしたい」「粘膜で直接ふれ合いたい」と願う瞬間はあると思うのです。そうした生々しくも純粋な欲望と、「望まない妊娠を避けたい」という理性とが拮抗し、切なさで胸がいっぱいになる……という経験をしたことのある女性は、決して少なくないのでは。
あらためて考えてみればコンドームというのは、無粋なものです。女性の凹と男性の凸が合わさるセックスは、よく「ひとつになる」といい表されます。でも、もっともひとつになりたいところに薄いながらも割り込んで、それを阻むのがコンドームの役目。だからこそ、正しく着用すれば避妊も感染症もかなりの高確率で予防できるわけですが、ほんとうにひとつになりたいと望むカップルが物足りなく感じるのは、いたしかたないことです。
となると、「妊娠を望んでいないなら、女性がピルを使用すればいいじゃん」という話になりがちですが、そう単純にはいきません。ピルはコンドームと比べると高額ですし、経験者の人はおわかりになると思いますが毎日決まった時間に飲まなければいけないというのはけっこう面倒です(慣れれば気にならないという方もたくさんいらっしゃるので、私がズボラなだけかもしれませんが)。それと数カ月に一度は婦人科にいって処方してもらわなければならず、これもなかなかの手間です。そして当然、人によっては服用できない場合もあります。
注射1本で10年避妊!?
女性主導でできる避妊法で、これなら薄い膜を隔てずしてふたりでひとつになれるピルですが、女性側の負担は少なくない。なんだかんだいって、コンドームがベストチョイスってことになります。そもそも、ピルを使用する場合もコンドームとの併用が理想といわれますしね。
そんな、これまでの避妊事情を大きく覆すかもしれないニュースが飛び込んできました。イギリスのメディアによると現在、〈男性用避妊薬〉の開発が進んでいて、実用化も視野に入ってきたとのことです。これ、気にならないわけないでしょ!
・薬剤を注射することで、精巣で作られた精子がペニスに運ばれないようにする
・ブロックするのは精子だけなので、射精はできる
(精液を放出する快感は守られる)
・一度の注射で、最大10年ほどの効果あり
・避妊効果を解除するには、別の注射を打てばよい
・ホルモンには影響を与えない
……って、なにコレ、すばらしすぎるんですけど。いったん病院で注射すれば、あとは日常生活に何も影響を与えず、しかも快感はまったく目減りしないって、こんなお手軽でいいの!? と思ってしまうほど。実用化された場合の費用については記事でも触れられていませんが、かなりの額を払ってでもやる価値あり、と考える男性は多いそうです。
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