連載

裏切る誰か、裏切らない何か 自傷遍歴中学編

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傷の数だけ理由(ワケ)がある

皆様ごきげんよう。自傷行為に関する連載二回目であります。

前回は、「昔と違って自傷もちょっと一般的になったよね」、「でも誤解や偏見は昔から変わらないっていうか、まあまだあるよね」といった事実確認と、ワタクシ・戸村サキが初めて自傷に及んだ小学五年生のときのことをお話しさせていただきました。今回は、そんな私がその後どうなっていったか、中学時代のことを書いていきたいと思います。

怒りの矛先は自分

受験にかろうじて成功し中学校に進学いたしまして、入学したその足でとある部活に入りました。私がその学校を受験したのは、その部活があったからと言っても過言ではありません。

校内ではわりと有名な部でした。これがまた、様々な意味でタフな部活だったのです。授業前・昼休み・放課後と活動していて、それ自体は苦ではなかったのですが、人間関係・上下関係がとても厳しかったのです。まあ、どこの学校にも一つはありそうなタイプのアレですな。

入学直後の浮き足だった空気が薄れ日々の部活にも慣れていく中、ちょっとした事件が起こります。

部活動中に、私を嫌っていたと思われる同級生に「戸村さんはいつも貧乏揺すりをしている。活動に集中していない」とか何とかいちゃもんを付けられたんですね。「何をまあ些末なことを」と今は思いますが、女子中学生の言動はデリケートで奥深いものです。

言われた私がどうしたかというと、その場で謝罪し普通に部活を終えました。

問題はその後です。帰路、友人らが一緒だったにもかかわらず、私は「貧乏揺すりをするこの足が悪いんだろ」と言いながらカッターを取り出し、友人らが呆然とする中、アレです、結構切りました。私よりも血を見て気絶しかけた友人が大変でした。

帰宅すると親は驚いて手当てしてくれましたが、私は「帰りに針金の塊に足突っ込んじゃってさー」と笑顔で嘘をつきました。

ここで一つの仮説が登場します。

言いがかりに腹を立てたなら、それを言った同級生に直接文句を言うとか、適当に殴っておくとか、あるいは他のものに当たるとか、怒りを「外」に向けて発散すればよかったのです。

しかし私は、怒りのマネージメントが絶望的に苦手でした。怒りを「外」に向けられない。結果、自分に当たってしまっていたのです。しかも、自分に当たって大概気が済んでしまうのです。実際、言いがかりをつけてきた同級生は私が足をアレしたことを知りません。

つまり、仮説は「他者への怒りを自分に向けてしまうから自傷する」というものですね。

この妙な現象は今に至るまでしぶとく生き延びています。怒りのマネージメントは未だに不得手です。たまに「あてつけ」以外の何物でもないような行動をとることもありました。ただ、今はなるべく怒りやその他の不快感情を相手や周囲に伝えたり、それが無理ならひたすらに書き殴る、といった対策をとっています。

ちなみに中学の三年間は部活に打ち込んでいて、クラスに友達はあまりできませんでした。部活仲間以外ですと、少年マンガを読んでいたのでそのつながりで一部男子と交流していましたが、そのせいでビッチ扱いされてましたね(真面目な学校だったので……)。とにかく、友人は少なかったです。

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戸村サキ

昭和生まれ、哀愁のチバラキ出身。十五歳で精神疾患を発症、それでもNYの大学に進学、帰国後入院。その後はアルバイトをしたりしなかったり、再び入院したりしつつ、現在は東京在住。

twitter:@sakitrack