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欲望漂白時代~戦場としてのバーゲンセールは女のハッテン場である

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(C)柴田英里

(C)柴田英里

 サマーセールの季節になりましたね。

 以前、プランタン銀座を慰安施設、ネイルやコスメカウンターを欲望処理のための風俗に例えた記事を書いたのですが、日本一始まりは遅いが値引率は高いラフォーレセールや、各種アパレルブランドのファミリーセール、サンプルセールなどの、「激しいバーゲン会場」は、「女のハッテン場」に近いような気がします。無論、私自身は戸籍や見た目の性別が女性なので、本物のハッテン場に行ったことはなく、あくまでもイメージ上のハッテン場なのですが……。

 私はセールが大好きで、出先に人だかりができているセール会場があれば、自分が興味のなさそうな店であっても半ば無意識的に徘徊する癖があります。

 別にとりたてて洋服が欲しいわけではないのに、パブロフの犬よろしくセールに行く習性がある自分について考えてみると、買い物依存症的な衝動というよりも、「激しいバーゲン会場」そのものの熱気や血眼になった女ばかりの争奪戦が好きなことに気がつきました。

 現在の日本では、女ばかりでハメを外して騒げる女子校的な場所というのは、まだまだ、思った以上に少ないように思います。

 居酒屋もクラブもカラオケも、女ばかりで集結して騒ぎたくても、そこにいる男性からはナンパであったり訝しがるような視線に晒されるなど邪魔をされます。男ばかりで同様に騒ぐ場合よりも弊害が多いように思います。「ラブホテルの女子会開催プラン」のようなサービスが出てくることは、女ばかりでハメを外して騒げる場所が極めて少ないことの象徴でしょう。

 いわゆる「腐女子」や「コスプレイヤー」の一部には、女ばかりでハメを外して騒ぐ文化が見受けられますが、その集まりに加わるためにはまず、BLやコスプレへの造詣を磨かなくてはいけないので、その文化に興味がない場合のハードルは低くないように思います(というか興味もないのに腐女子やレイヤーコミュに参加したら、ぶっちゃけ愛好家たちにとっては邪魔でしょう)。

 その点、激しいバーゲン会場は、当たり前ですが「来る者は拒まず」なので安心です。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」