大人になった現在、父について冷静に思い返してみると、わりとしょうもない人だったと思います。母の言葉を平気で無視するくせに、自分が母に無視されるとプンプン怒って拗ねるなど子供っぽい面がありました。自分が妻という立場になった今は、そんな父と30年近く一緒にいる母はそれなりに大変だったんだろうなと思えます。「いまだにお父さんにイライラするよ」と聞くと、私もこの先30年、主人へのイライラは消えないのか……と途方に暮れてしまいますが。
また、母の「男の人なんてみんなそんなもん」という言葉ですが、もちろんそんなワケはないでしょう。全ての男性がうちの父や主人のように、妻をイライラさせているかと言えばそうではないはずです。ただ、母や私にとって、一番身近な“男”は父や主人です。DVや多額の借金など、自分の生活が危ぶまれるようなことをする夫であれば、「男はみんなこうなんだ」と思い込むのは危険ですが、小さな不満に関しては「男だししょうがない」と諦めることで、自分のストレスを減らすことができるのではないでしょうか。「他の男の人はもっとしっかりしてるはずだ」「自分の夫だけがどうしようもない男なんだ」と思うと、それだけストレスも倍増し、さらにイラっとするポイントが増えてしまうでしょう。そうではなく、父の人間性を“単なる性別”で括って終わらせてしまうことで、母は父と何十年も一緒にいられたのかな、とも感じます。もちろんこのやり方が正しいものだとは言いませんが、少なくとも私の母はそうやってきたということです。
「男だから」「女だから」と、性別だけでその人の本質を決めつけることは本来よくないことです。ただ、それを他者に向けたりすることはせず、自分の中の着地点として捉えることで結婚生活のイライラを少し減らせるのならば、悪くない考え方かもしれません。
(リオネル・メシ子)
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