杖をついてでも会いたい女がいるおじいちゃん
脚をぷるぷると震わせ、杖をつきながら入店してきたおじいちゃん。お目当ては、おじいちゃん人気ナンバーワンのミドリさんでした。心配になるレベルの脚の悪さだったにも関わらず、週に一回は必ず顔を出していました。本音を言うと、しんどそうな脚を見ると上手く笑うことさえできなかったので、ヘルプでも着きたくないなと思っていました。なんとなくヤバそうな雰囲気のおじいちゃんだったし……。けれど、そんな我儘が通用するはずもなく、ミドリさんが他の卓へ呼ばれた時に、私がヘルプとして着くことになりました。戸惑っているのが伝わってしまったみたいで、おじいちゃんは「大丈夫だよ、俺はミドリちゃんにしか興味がないから」と言ってくれました。
(いやいやいや、そりゃそんな脚で来るぐらいだからそうだろうよ!)と言いたいのを堪えつつ、接客しました。ミドリさんと初めて会った時のことや、ミドリさんの好きなところを聞いたら、とても嬉しそうに話してくれました……脚を震わせながら。
初めてこのお店に来た時は、まだ脚も悪くなくて、ミドリさんとしょっちゅう同伴に行っていたそう。ところがある日、おじいちゃんは交通事故に遭ってしまい、半身不随に。その知らせを聞いたミドリさんは、出勤前に毎日お見舞いに行っていたそう。「ミドリちゃんが応援してくれたから、俺はここまで歩けるようになった。俺の脚はミドリちゃんのためにある」そう言いながら、ウーロン茶を飲むおじいちゃんは、 ちょっとかっこよかったです(またしても、ウーロン茶)。
今は脚が悪くて同伴はできないけど、せめて来店だけでも……とお店に通っているとのこと。なんだよこのいい話! キャバクラって、もっとゲスくて、汚い場所じゃなかったのかよ! 思わず私まで感動してしまうほど、素敵なお姉さんとおじいちゃんのお話でした。てか、ミドリさんすごすぎる。
「腹いっぱい食え!」と言ってくれたおじいちゃん
私がお店に入ったばかりの頃に出会ったおじいちゃんの話です。お店の常連さんで、みんなから慕われている人でした。ちょっと気が荒い時もあるけど、陽気に演歌を歌う姿が今でも思い浮かびます。そんなおじいちゃんの席に初めて着いた時のことです。
『お前、新入りか! こんな店で働くなんてもの好きだな~。今度、仕事前にメシ行くか!』と、いきなり同伴に誘ってくれたのです。珍しいなぁと思いつつも、素直に嬉しかったので、次の出勤前に一緒にご飯へ行くことに。
おじいちゃんが選んだお店は、居酒屋でもなく、おしゃれなバーでもなく、地元の小さな定食屋さんでした。
『好きなもん頼め! 腹減ってるだろ? 若いんだから、腹いっぱい食え!』
そう言ってご馳走してくれました。戦後か。“若い人はみんなお腹が減っている”というイメージは、今も変わらないのでしょうか。でも、その気持ちが嬉しくてお腹いっぱい食べました。同伴で定食屋さんなんて初めて行ったけど、なんだか暖かいなぁと思ったのでした。
その後、私を指名するわけでもなく、同伴するわけでもなく、食事に行ったのもその一回きりでしたが、次に新しい女の子が入れば、私と同じように食事に連れていくのでした。おじいちゃんにとって、それが楽しみだったのかもしれません。
キャバクラは心のよりどころ
他にもたくさんたくさん、おじいちゃんのお客様がいました。フロアがおじいちゃん臭くなることもあったし(笑)、長い長い説教をされることもあったけれど、おじいちゃん達と話せたことは思い出です。みんな、ちゃんと生きてるのかなぁ? と心配になることもありますが、きっと今もあのお店でウーロン茶をガブガブ飲んでるはず。これからの時代は、キャバクラにおじいちゃんが増えるかもしれません。介護キャバクラ状態だったあのお店だけど、社会貢献できていたらいいなぁ……と、ふと思い出したのでした。
■おはなちゃん/ オープンスケベ。4歳で初めて股をこすってから、性に目覚めた22歳。普段は女子大生、事務アルバイトをこなしながら日々性を楽しんでいる。おじさんキラーであり、現在24歳年上のおじさまとお付き合い中。
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