連載

「別れた恋人のバイブをどうするか」を考えることは、もしかしたら政治や公共性を考えることにもつながるかもしれない

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押し入れの奥に眠る捨てられない荷物。この中には、元カノが使っていた化粧水など が……(開けるの怖い!)

押し入れの奥に眠る捨てられない荷物。この中には、元カノが使っていた化粧水など
が……(開けるの怖い!)

なぜ恋バナは “くだらないモノ”だと思われるのか?

 私は普段、男ばかりで構成される「桃山商事」というユニットに所属し、人々から「恋バナ」を聞き集めて原稿を書いたりラジオでしゃべったりする生活を送っています。

 そんな自己紹介をすると、大抵「男が恋バナってwww」と鼻で笑われます。おそらく、「恋バナ=オンナコドモがするもの」というイメージがあるのでしょう。男が、35歳にもなって、何で恋バナなんかしてんだよ……と、降り注ぐ視線にはそれなりに厳しいものを感じます。「恋バナ好きのフリーライターです」と書いて婚活サイトに登録したこともありますが、女性からの反応はゼロでした。

 恋バナが軽んじられるのは、それが「極私的なこと」で「客観性のないもの」だと思われているためではないかと感じています。恋愛なんて人それぞれの問題だし、いくら話しても生産性のない無意味な行為でしょ……と、実際に嫌味なオッサンからそんなことを言われた経験もあります。

 でも、はたして本当にそうでしょうか?

 私の考えはむしろ真逆です。恋バナは極めて“社会的”な行為だし、何なら“政治性”の高いものだとすら考えています。なぜなら恋愛は、「自分という人間」が色濃くにじみ出てしまうものであり、「人間関係」というものに否応なく向き合わされる機会だからです。

 言うまでもなく、この社会の最小単位は「個人」です。それらが織り重なる形で、家族や会社や国というものができあがっています。だから、その最小単位であるところの自分という人間を徹底的に見つめ、他者との関係について思い悩み、それらを誰かと意見交換していく恋バナは、極めて社会的かつ政治的な行為なのです!

 ……と、内心ではそんなことを思いながら恋バナを収集しているわけですが、実際に聞き集めたエピソードは、確かにそれ単体ではコンテンツになりません。「世の中にはいろんな恋愛があるなあ」と驚きはしますが、言ってしまえばそれだけ。いわゆる“RAWデータ”のような、生で未加工の素材に過ぎません。

 そこから、それはどういうことなのか、なぜそれが起こったのか、どこまでが個人的で、どこからが普遍的な要素なのか──と、原因や背景を分析したり、中身を切り分けて分類したり、テーマに沿って整理したり、他のエピソードと比較したりしながら、恋バナをコンテンツへと昇華させていきます。

“オトコ版SEX AND THE CITY”「二軍ラジオ」、その中身は……

 そんな作業を、我々は主に「ラジオ」という場でワイワイ楽しくやっています。それが桃山商事のPodcast番組『二軍ラジオ』です。

 我々は2001年に結成されたユニットですが、10年間コツコツ収集してきた恋バナを放っておくのはMOTTAINAI! と、“オトコ版SEX AND THE CITY”を勝手に標榜して2011年のバレンタインデーにネット配信を始めたのがこの二軍ラジオでした。

 この番組では、毎回ひとつのテーマを設け、それに沿ったエピソードを紹介していきながら、男女のすれ違いやジェンダー構造の問題点について考えていきます。これまで放送したテーマには、例えば……

第11回「男女のお会計問題」
→合コンのワリカン問題、デートではどちらがどのくらい出すのか……など、普段は触れづらい「金銭感覚のズレ」について考えた回

第46回「あの素晴らしい愛をもう一度」
→別れた恋人に未練を抱いている人たちのエピソードを紹介しながら、「復縁とは一体何なのか?」について考えた回

第70回「男のカッコつけ大辞典」
→女子がイラっとした「男のカッコつけ」に関するエピソードを多々集め、カッコつける男の心理を徹底的に分析した回

第84回「母と息子」
→「恋愛観は親子関係に起因する」という仮説のもと、マザコン男に関する話を紹介しつつ、男が「母親」という存在をどう捉えているかについて考えた回

第94回「ぼくらが知らない、女たちのワンナイトカーニバル」
→女子会以外ではあまり話すことがないと言われる女性たちの「ワンナイト体験談」を集め、そういう事実から男がいかに目を背けているかについて考えた回

 といったものがあります。このように、恋愛のチマチマした問題を毎回ひとつ掲げ、ときにゲストを迎えたりしながら議論を続けています。

 最初は小さなICレコーダーひとつで始めた手作りのラジオですが、お小遣いをはたいて専用の機材を買い揃えたり、デザイナーさんにカワイイWEBサイトを作っていただいたり、なぜか編集者さんの目に止まってまさかの書籍化『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)をしたりしながら、足かけ4年半、ついに第100回目の放送を迎えることになりました!

ジャージ、化粧水、バイブ……別れた恋人の荷物、どうしてる?

 そんな記念すべき第100回目のテーマは、「元カレ元カノの荷物をどうするか問題」です。これを、100回記念イベントとして8月2日(日)に阿佐ヶ谷ロフトで公開収録いたします。ここからは宣伝です\(^o^)/

 第100回という大台にも関わらず、いつにも増してチマチマしたテーマを選んでしまったなと若干後悔しておりますが……彼氏の部屋に置いてたジャージとか、残された彼女の化粧水とか、借りてたマンガとか、二人で買った家財道具、清算してないお金の貸し借りとか、二人で使っていたコンドームやバイブとか、そういうの、めっちゃあるじゃないですか? あれ、みんなどうしてるんですかね?

 もちろん、普通に会って受け渡す人もいると思うし、「全部捨てちゃって!」と連絡する人もいるでしょう。着払いで事務的に送り合う人たちもいれば、いつまでも捨てられずに残ってる荷物もあるはずです(私の部屋にも4年前に別れた彼女の化粧水が残っております……)。

 例えばある知人女性は、自分の部屋で彼氏に別れ話をした直後、すぐさま彼氏の荷物をまとめ、その足で近所のゴミ収集場に投げ捨てたとか。こうすることで、「私たちの関係は完全に終わった」と視覚的に共有するのが目的だそうです。

 また、彼氏の風俗通いが発覚して別れたという知人女性は、「取りに行くから私の荷物に一本も指を触れないで!」と告げたそうです。理由は、彼氏のことを生理的に受けつけなくなってしまったから。ここから見えるのは、部屋に置いてある荷物は、もしかしたら「自分の一部」なのかもしれないということです。

 我々はこのテーマを通じ、「失恋とはどういう経験なのか」ということについて考えていけたらと目論んでおります。自分と他人をどう区別しているのか。共有物に対してどのような意識を持っているのか。喪失体験や事後処理にどう対峙するのか。そういった問題を見つめることは、その人の人間性や価値観、ひいては社会性や公共意識といったものを考えていくことにもつながるはずです。

 イベントは8月2日(日)18時30分に開演です。阿佐ヶ谷ロフトという広めの会場を押さえてしまったため、お客さんが入らなかったら完全に鬱状態でイベントを行うハメになります……。それは怖い! 怖すぎる!

 というわけで、この記事を読んで桃山商事の恋バナに興味を持ってくださった方は、ぜひイベントに遊び来ていただけると幸いです。「恋バナに興味ないけど8月2日はヒマでしょうがない」という方も、ぜひ足をお運びいただけたらうれしいです(切実!)。

イベント概要

“恋バナ収集ユニット”桃山商事presents
「二軍ラジオ」第100回記念イベント
〜元カレ元カノの荷物をどうするか問題〜

日時:8月2日(日)18時30分〜
場所:阿佐ヶ谷ロフトA
出演:清田代表、佐藤広報、森田専務(桃山商事)

※エピソードの事前投稿&当日投稿も大歓迎!
詳しくは下記をご参照ください。
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/35652

桃山商事 清田代表・佐藤広報/二軍男子で構成された恋バナ収集ユニット「桃山商事」。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆など、何でも手がける恋愛の総合商社。男女のすれ違いを考える恋バナポッドキャスト『二軍ラジオ』も更新中。コンセプトは“オトコ版 SEX AND THE CITY”。著書『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)が発売中。Twitterは コチラ

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清田代表/桃山商事

恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆などを通じ、恋愛とジェンダーの問題について考えている。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)や『大学1年生の歩き方』(左右社/トミヤマユキコさんとの共著)がある。

twitter:@momoyama_radio