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夏到来。梅の精? に思いを馳せて「梅肉じゃが」

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こんにちは。自意識和代でございます。
暑い夏がやってきましたね。みなさまいかがお過ごしでしょうか?
今月はさっぱりした一品を、ということで「梅肉じゃが」をご紹介したいと思います。
いったん冷蔵庫で冷やしてから、冷酒とともに食べるのが気に入っています。
お喋りは梅にまつわる思い出話を……と言いたいところですが、ないので取ってつけたような小話を書きました。
暇つぶしにどうぞ。

~雲~ 〜空〜 ~雲~ 〜空〜 ~雲~ 〜空〜 ~雲~ 〜空〜 ~雲~ 〜空〜 ~雲~

6月も終わろうかという土曜日の午後、高校の図書室で由美子はペンを弄んでいた。
ふと顔を上げると、香と翠が勉強している背中が見える。
後ろでヒソヒソ話をしている男子の声などお構いなしに二人は集中している。
由美子はやっぱりペンをクルクル回し続けていた。

「ねえ、少し休憩しない?」
「そうだね」
「ふあ~! そうしようか」

二人と一緒に図書室を出た。
プシュ! と音を立ててペットボトルの蓋を開け、コーラを飲む。
「最近、二人ともすごく勉強頑張ってるね」
「うん。あたしさ、将来バリバリ働きたいの」と香。
「似合う〜w バッリバリな香の姿が目に浮かぶよ」と由美子は笑った。
「私は、単純に面白いなって思って」
「え、面白いって……勉強が?」
「うん。ひとつ何かわかるとその先をもっと知りたいなって思うんだ」
「へ、へえ……」
「あー、その気持ちわかるよ、翠」
「え、そうなの? 私は勉強自体めんどくさいな〜。ねえ、明日プール行かない?」
「いいね! あっ、ごめん由美子、明日はバスケがあるんだ……」
「私もちょっと用事があるの……ごめんね」
「そっかぁ……」
二人と別れて自転車を漕いだ。

〜風〜 ~風~ ~風~ ~風~ ~風~ ~風~

「ただいま」
「おかえり。あ、由美子、ちょっと手伝って。おばあちゃんから届いた梅を漬けたいのよ」
「え〜? やだよ」
「いいじゃない。どうせ勉強はかどってないんでしょ?」
「失礼ね! 勝手なこと言わないでよ!」
とは言ったものの、実際母さんの言う通りだった。
「梅はひととおり洗ってあるけど、傷のある梅と綺麗な梅を分けといてね。それから爪楊枝でヘタも取っといて。ほらこれボウル。いやぁ〜。由美子が手伝ってくれて助かるなぁ〜!!」
……足取り軽く台所に戻る母さん。お調子者だな、もう。

居間に新聞紙を広げて、大きなボウルと小さなボウルを置く。座布団の上に座り、「ふぅ」と一息吐くと由美子は作業を始めた。
梅を手に取り、くぼみに爪楊枝をそっと入れてピン! とヘタをはじく。

ピン! コロン……
ピン! コロン……
ピン! コロン……

ひとつ、またひとつ……とボウルに放り込まれる梅をボーッと眺めていた。
小さなボウルには梅のヘタが少しずつたまっていく。
由美子の手で放り込んでいるのだが、同じ作業を繰り返していると自分の手のような自分の手じゃないような変な感じがする。
「あ」
梅がコロンコロン……と転がり落ちてしまった。
部屋の隅や縁側。テレビの裏。しばらく探してみたけれど、見つからない。
「あ〜ぁ。油断しちゃったよ……ま、いっか。1個くらい」

ピン! コロン……
ピン! コロン……
ピン! コロン……

……(コロン)(コロン)(コロン)(コロン)(コロン)(コロン)(コロン)……

「ああ、ありがと由美子。ごはんよ」

夕食を終えて部屋に戻り、扇風機のスイッチを入れる。
机に向かってはみるものの、やっぱりペンをクルクルと弄んでしまう。

去年の今頃はもうちょっと三人で遊んでなかったっけ……
〈ねえ〉
中学の時は毎日のように泳いで真っ黒けだったよな。
〈ねえ〉
……ってそれは部活か。あっ、そうだ。優子たちでも誘ってみるかな……
〈ねえ!! 聞こえないの?〉
へっ!? 誰かいる!?
部屋を見渡しても誰もいない。
タンスを開けてパジャマを出しても、部屋の電気を消してみても何もないし。
とりあえずお風呂入ろう……

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自意識和代

人の好意をなかなか信じられず、褒め言葉はとりあえず疑ってかかる。逆にけなし言葉をかけられて「なんて率直なんだ!」と心を開くことがある。社交辞令より愛あるdis。愛がなければただのdis。凹んじゃうよ! ラブリーかつ面倒なアラフォーかまってちゃんである。