
B子さん、探偵向いてるかもね
A子さんと対話して、改めて、プロ彼女とは何なんだろうと考えました。「彼氏の言うことは絶対! 三歩下がって控えめに! ひたむきに尽くし続ける! 服装の趣味も彼氏に合わせる! 彼氏に作る料理は常に10品以上!!!」……こうした“プロ彼女の鉄則”に、これじゃただの奴隷だの家政婦だの、自分押し殺してまでプロになりたいか?? など異論も噴出しましたよね。
でもでも、「プロ彼女」となった本人が幸せならいいんじゃないでしょうか。愛する彼氏に尽くし続ける日常が幸せじゃないなんて誰が決めたのでしょう。
前回も書きました通り、プロ彼女とはもはや「芸能人と交際している一般女性(読モ、元モデル、アパレルプレス、華やかな企業の社員など、芸能人とつながれそうな職種)」という意味のみでは浸透しておりません。この言葉を作った張本人の作家・能町みね子さんの意図とはかけ離れた形のようですが、「ハイスペックな彼氏の出す厳しい条件をクリアし、本命として交際している理想の彼女」という解釈が一般的になっています。
ですが、今回紹介するB子さん(22歳/イベントコンパニオン)は「とにかく肩書きのある人と交際をしたい」という自分の欲望に忠実に従い、必死に奮闘して現在の彼氏と交際に至ったそうです。B子さんは前回紹介した「自然体で尽くすプロ女」A子さん(リンク)とは異なり、彼氏の心を射止めるために緻密な計算をしました。
プロ彼女・B子さんの場合
イベントコンパニオンとして企業ブースに立ったり、時には新商品PRイベントでMCをしたりと華やかなお仕事をしつつ、夜は西麻布や中目黒に戦闘態勢で繰り出し、地位のある男性との合コン、有名人の来るバースデーパーティーなどには積極的に参加していたB子さん。容姿はもちろん端麗ですが、ファッションの系統はギャルでもコンサバでもなく、カジュアル・クール系でした。
あるとき彼女は、芸能界やアパレル業界にも顔が利く有名な実業家(36)に出会い、標的を定めたそうです。彼が非常にモテることを知っていたB子さんは、彼を落とすために、物凄く緻密な計画を立てました。
(1)データ収集
彼は裏方のお仕事がメインとはいえメディアでの露出も多少はあるし、ブログなんかも更新している人でした。そこでB子さんはブログ記事を約3年分ほど全て遡り、彼の好きなお酒、料理、音楽、映画、その他趣味、どんな女性の服装や香水が好みか……などを調べ上げていきました。
(2)情報アウトプット
彼の好きな音楽や映画は全てチェックし、あたかも偶然を装った「私もこれ好きなの!」から始まり、連絡をこまめに取る仲に進展させます。デートの直前には美容院に行き、ネイルや服装も彼好みに合うようフルチェンジ、調べた情報をもとにした「彼と趣味が合う理想の女性」であることをアピールするわけですよ。彼女が「私、これ好きなんです~」と言うものは全部、彼が好きなもの。彼は「こんなに意気投合するなんて、運命かも?」と思ったのでしょうか、B子さんを気に入り、徐々に他の女性陣と違って彼女を特別扱いするように。自分の友達の飲みの席にB子さんだけを呼ぶことも増え、自然に交際がスタートしたといいます。
元々はシャツにジーンズスタイルの多いカジュアルなファッションを好むB子さんだったのですが、「この男性と絶対に付き合う!」と狙いを定めてからは、リサーチした彼の趣味に合わせて女子アナ系清楚なお姉さんスタイルに変貌していきました。
自分の趣味を全消ししてまで、彼を惚れさせることにこだわったのはナゼでしょうか。
B子さん「ハイスペックな男性にしか興味が持てないんです。昔からそう。魅力を感じるのはその人の外見より人柄より、肩書きや人望の厚さ。そして、どうしても、この人と付き合いたい!って思ったら、私は昔からそうしてきました。それは自分を押し殺すという感覚ではないんです。彼に好きになってもらえない自分を好きになれないんです。そのためならいくらでも努力できます」
データ収集や計算によって好意を誘うのは面倒だったり罪悪感があったりという女性もいますし、「ありのままじゃない偽りの自分」を見せて好かれることに息苦しさを覚える女性もいると思うのですが、B子さんは全然、苦痛と思わないわけですね。頭をフル回転させて相手に取り入って、カメレオンのようにごく自然に適応できると。そうかそうか、ある種振り切っていて尊敬できるかもしれません。
でも、その彼に恋心を抱いたというより、社会的立場にこだわって交際したいと思ったわけじゃないですか。どうしても、そこに執着する理由が私にはわからないのですが。
B子さん「付き合う男性というものは自分の鏡ってよく言うじゃないですか。私は地位のある男性と一緒にいることで自分自身が洗練されますし、彼が好きというより彼と一緒にいる自分が好きという満足感が欲しいんです」
あああ……完全に彼氏さんの女友達からは攻撃されそうな考え方ですね。
ただ、彼氏も彼氏。彼氏は「理想の彼女、という女だからこそ付き合うわけで、趣味の一致や容姿端麗なのは当たり前、それだけでは付き合いを続けることはできない」と言い切ったそう。なんか、ナイスカップルだと思います。そんなハイスペック彼氏とB子さんの間に存在する、お付き合いのルールを教えてもらいました。
その1、彼がメールの返信や電話の折り返しをしなくても文句を言わない
その2、仕事を第一に頑張る彼の邪魔になる行動はしない
その3、彼氏の友達に紹介されても決してでしゃばらない
その4、常に彼氏を立てること
その5、彼氏が呼んだ場所には急な連絡であっても必ず来ること
このルールに関してB子さんは「なんの不満もない」そうです。えええええ、本当に? その5なんて毎回実行するのは結構厳しくないですか? もしB子さんが友達とご飯を食べてる途中でも、「彼氏から連絡が来たから、じゃっ!」って退散するワケですよね。友達なくしません? にわかには信じられません……あ、でも、彼というより彼と交際してる自分が好き、なんでしたっけ。それなら何よりも「彼との交際ルール」を優先させるのかなぁ。その立場を守ることがB子さんには最優先なんですね。
B子さん「本命彼女として彼の友人や業界仲間に紹介されることが多い以上、私も自分の体調管理や容姿などには徹底的に気を配ってます。彼は外食デートを好むので、家でおかずを何品も作って待機……といったシェフ的な役割は求められませんが、彼の友達を含めて食事に行くときはホステスさん並に気を配ることを求められます。そして基本は私は喋りません。彼の後ろをついて歩き、世話をするために行くって感じですね。でも、そのくらい、なんてことないです。尽くし甲斐のある男性と一緒にいることで私は幸せなわけですし、彼と交際するためにたくさん努力してきたんですから、理想の女だって言ってもらえていることは本当に嬉しいんです。若くて可愛いだけじゃ飽きられることも知ってますから、ルール以上のことも何かしていかなきゃなぁって思ってるくらいですよ。今年中に同棲も考えてくれてるみたいなので」
様々な場所に足を運び、標的を定め作戦を立案、彼好みの女性を装ってあらゆる武器を使いこなしプロ彼女となったB子さん。彼の肩書きへの恋だとしても、その頭脳と美貌と気の利かせ方を最大限に活かし、彼女にとって理想的なポジションをキープする生き方は、“プロ”の肩書きに相応しいのかもしれません。なかなかできることではありません、それは彼女の能力で、生き方なのですから。
交際スタートしたら作戦完了とはいかず、関係を維持させることも、とぉーっても大変なことだと思います。周りから妬まれもするでしょうし。でもそれも含めて、自分の幸せが彼の隣にいることだと言う彼女。生まれながらにして備わった「献身好き」な資質によるプロではなく、これまでの人生の中で彼女が学んだ知恵の集大成としてここにたどり着いたのでしょう。ただ、B子さんがこのやり方を続ける限り、彼女の価値を決めるのは交際相手の男性です。彼女がどれだけ関係継続のための努力をしたとしても、相手次第で価値を失ってしまう可能性が絶対に拭えないことだけは、念頭に置いてほしい。もちろん、彼女自身、それがいかにシビアなことかわかっているからこそ、「ルール以上のことも何かしていかなきゃ」と考えているのでしょうが。うん、でもね、何をしたって、離れるときは離れるのよ……気をつけてくださいまし。
次にご紹介するプロ彼女C子さんは、なんと入籍済みです。その新婚生活について掘り下げます。次回、お楽しみに。
(園崎愛海)