連載

人に信用されるには、どうしたらいいですか?

【この記事のキーワード】

人の話が真面目に聞けない

たしか大学3年のころです。

リーダーズキャンプという合宿にどうしても参加しなくてはならなくなりました。

これは大学の公認サークルの会長と会計が一同に会する大規模な研修合宿でした。

僕は映画研究会に所属していたのですが、およそ100人ほどの人間がいる大きなサークルにも関わらず、何故か会長というポジションを無理矢理押しつけられてしまい、この合宿に仕方なく参加することになったのです。合宿では、リーダーとしての心構えなんかを研修するのだとか。マジで身につけたくないよなぁ、と思いながら僕は渋々嫌々苛々参加しました。大体昔から、嫌がらせで学級委員をやらされたりと、僕はそういう貧乏クジばかり引かされてきた人間でした。

さて、そのバカげた研修も中盤に差し掛かり、大学のOBで財界の成功者なんかを招いての講演会なんかが開かれました。勿論抜け出してサボろうと思ったのですがあえなく捕まり、仕方なく出席することに。某有名企業の専務という脂ぎった男が、突然こんなことをのたまい始めました。

専務「私はこう見えて大学時代は映画を撮っていたんだよ。青春だなぁ。映研の会長は今日来てるかな? いたらちょっと壇上まで来てくれるか? 伝えたい、大事なことがあるんだ」

嫌な予感がしてきたので、僕は素早く目を閉じて寝たふりを始めました。大事なこと、絶対伝えられたくない。薄目を開けると、周囲の人間が一斉に僕の方を振り向いたのがわかりました。一緒にこのキャンプに参加していた、映画研究会・会計のオクナくんが必死で僕を揺さぶります。「奥山くん、起きてよ!」超小声で応答します「無理。寝てるから」「起きてるじゃん! このままじゃ収拾つかないよ」「うるせぇ。俺はあんなインチキな大人なんかに死んでもならねーぞ」「ライ麦畑のホールデン少年みたいなこと言ってる場合かよ!!」それでも専務は諦めず云々かんぬんと粘っていましたが、僕は意地を通して寝たふりを完遂しました。

「お前、そんなどこまでも舐め腐った態度じゃどこ行っても通用しないからな。人間の屑だよ、お前なんか」

生活態度の指導中に、あまりに話を聞き流しすぎる僕の態度に激高してそう叫んだ高校の担任。「30までに絶対死ぬから別にいーんだよ、ハゲ」と返していた10代の僕(ハードにいじめられていたのに、無駄に教師まで敵に回す残念な人物、つまり僕)。嗚呼、でももうアラサーなんです。10代で作家として華々しくデビューしてさっさと自殺するって完璧な人生設計を立てていたのに、どうして今こんなことになっているんだ!?

……いや、でもね、実際問題なんですよ。人の話が真面目に聞けないって。授業も会社員時代の研修も寝て過ごしたし、例えば業務の引き継ぎだって聞き流してるから、あとから痛い目見る羽目になるし。それだけでなく、何より人間関係で「お前にこんなこと喋ってもしょうがない」って扱いされちゃうわけですから。ミョンちゃんですら最近電話していて、たまに「ねぇ、本当に真剣に聞いてくれてる? 顔が見えないから不安になるんだけど。あなた、本当は内心どんなこと思ってるの?」なんて言ってくるんですよ。

必死で真面目に話聞こうとしてるんですよ! でもどうやったら真面目に話を聞いてるってことになるのかわからない。真剣に話を聞く才能がないんです……。例えば母親から将来のことについてやけに真剣なトーンで話をされてても、ついきゃりーぱみゅぱみゅのこととか考えてしまうんですよ!

今回の相談「どうすれば人の話が真面目に聞けますか?」

とにかくそんな風にして、他人のことなんかなるべく気にしないように、煙に巻いて生きてきたから、今さら他人と深く関わるのって、やっぱりしんどくてしょうがないんですね。他人が嫌いなんです。それで会社辞めて無職になってから3年、殆ど誰とも会わずに家でひきこもっていたんです。ああ、なんて心安らかな日々であったことでしょう。でもこの連載を始めたからには、もうちょっとそんなこと言ってる場合じゃなくなってきたんですよね。

連載が始まって、本当に色んな方々からコメントを頂きます。で、ハローワークに行ったりオフ会に行ったり両親と食事に行ったりKENJIさんに人生相談したり犬を散歩に連れて行ったり担当編集者の家に泊まり込み元カノのミョンちゃんと再会したり旅行に行ったり。なんか止まってた時間が一気に流れ出したかのように色んな事が起こっていて、まぁこれまでの僕なら面倒臭いなって思うはずなのに、なんだか楽しみ始めている自分がいるんですね。

なんか、生きてるって感じするなぁ、って思うんです。それが本当に良いことなのかどうかわからないけど。好きなんですよ、この連載。書いてる僕自身がとにかく何か救われているようなところがあるんです。誰も信用してくれないかもしれないけど、今や心の拠り所なんです。

でも、

・そのコメントの内容を、本当に受け取ろうとしているのか、はなはだ疑問です。

というコメントがつくわけですから、やっぱりこの連載でも、僕のふざけた人間性がにじみ出ているんですね。このままじゃ誰からも愛想をつかされて……連載も読まれなくなり打ち切り、ミョンちゃんからも親からも相手にされなくなり、路頭に迷うことに。いや、別にそうなったらそうなったで適当に働いてその日暮らしをするんでしょうけど。でも間違いなく1人で、それはそれは孤独な人生が待っている気がします。そう、連載の一番最初の回で想像したような、暗い未来のイメージです。ぽつん、と一人……。

それは、寂しい。

「私は死ぬ前にたった一人でいいから、ひとを信用して死にたいと思っている。あなたはそのたった一人になれますか。なってくれますか。あなたははらの底から真面目ですか」

ふと、あの高校の教科書なんかにも載っていた、夏目漱石の代表作『こころ』をパラパラと開くと、そんな台詞が目に飛び込んできました。なんだか僕は自分が恥ずかしいような情けないような気持ちになり、泣きそうになりました。僕は誰かに対してはらの底から真面目になったことが一度もない。こんなままで死んでいくなんて、本当は、本当に嫌だ。

だから、教えて下さい。哀れんで欲しいとかじゃないんです。直したいんです。

どうすれば人の話が真面目に聞けるのか。真剣ってなんですか? どうしてみんなそんなに真面目でいられるんですか? ぜひ教えて下さい。お願いします。

botton

奥山村人(おくやま・むらひと)
1987年生まれ。京都在住。輪ゴムを飛ばすと自分に当たる。Twitter:@dame_murahito BLOG:http://d.hatena.ne.jp/murahito/

backno.

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奥山村人

1987年生まれ。京都在住。口癖は「死にたい」で、よく人から言われる言葉は「いつ死ぬの?」。

@dame_murahito

http://d.hatena.ne.jp/murahito/