――うーん。男友達との交流以外に、結婚前と変わったことはありますか?
K「思い当たるのは、常に旦那のことを考えながら行動するようになったことですかね? このぐらいの時間に帰ってくるだろうから、ご飯の用意は何時から始めよう、明日は何時に起きるだろうから目覚ましをセットしておこう、とか。私が家にひとりでいると旦那が気を遣って早く帰ってこようとするから、旦那の帰りが遅い日は私も友達と出かけようって思ったり。でも、これって結婚したら当たり前のことですよね」
――私も一応新婚の部類ですけど、旦那の起きる時間を考えて目覚まし時計をセットしたりはしないですね。「何時に起きたいからセットしておいて」って頼まれたらするかもしれませんけど、自分が忙しい時だったら「それくらい自分でやって」って言っちゃいそうです。Kさん、すごく尽くすタイプというか、完璧主義なところありませんか?
K「全然完璧じゃないですよー。料理もワンパターンだし、気がつくとテレビの上がホコリだらけだったりするし……」
――ご主人は家事はしないんですか?
K「ゴミ出しくらいですね。私のほうが仕事の終わる時間も早いし、家事が嫌いなワケじゃないので不満はありません。実は旦那に家のことをさせるのに、ちょっと罪悪感があったりして……」
――でも実際、共働きで家事のほとんどを担当して、常にご主人の行動を先読みするって、かなり大変じゃないですか?
K「私の母がそんな感じだったんですよ。会社勤めをしながら、いつも父が出かける前に着替えとか持ち物とかサッと準備して。だから結婚したらそれができて当たり前なのかなって。旦那も、私がいろいろ準備してることを自然に受け入れてるみたいだし、やっぱりこれが妻としての役割なのかと」
――それを全く負担に感じていないのならいいと思うんですが、結婚前にはなかった虚無感の原因になっている可能性もあるんじゃないでしょうか?
K「『結婚したんだから、いい奥さんになりたい』っていう気持ちは確かに強いのかもしれませんね」
“いい奥さん”像に、仕事、家事、父の世話を完璧にこなしていた母親を投影しているKさん。しかし、夫の身支度を完璧に準備し、夫の都合に合わせて動くだけがいい奥さんの条件ではありません。2人で生活しているのだから、夫に家事を手伝ってもらうことに妻が罪悪感を覚える必要もないでしょう。結婚したとはいえまだ子供もおらず、彼女もひとりの人間で、ご主人のためだけに存在しているわけではありません。自分のために使う時間があってもいいのではないでしょうか。いまはまだ難しそうですが、Kさんが心から自分の時間を楽しめる瞬間ができれば、もしかしたら虚無感がなくなることにつながるかもしれません。
(リオネル・メシ子)
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