インタビュー

男子からの「好き」を集めて自己肯定の材料にしていた。元サークルクラッシャー・鶉まどかの考えていたこと

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――鶉さんは社交的なんですね。コミケに出展するのは、サークルに所属しないといけないのかと思っていましたが、たった一人で出来るものなんですか。

 個人で出来ます。お金さえ払えば出来るので。コミケとか同人イベントって、狭いパイプ椅子と机を一個渡されて自分のブースをつくるだけなので、そこで一日、たとえば11時から3時までいると両隣の人と仲良くなったりしますね。あるいは自分の二次創作物の宣伝をTwitterに書くことで、同じカップリング好きな人や、小説書いてる人と交流が持てたり、「じゃあ一緒に何人かで同じテーマで本を出しませんか」って、ゆるっと繋がりが出来ていく感じですね。オタクっていうとコミュニケーションが下手そうなイメージがあるかもしれませんけど、そうやって普通に繋がって、コミュニティを広げていくんですよ。

――そうなんですね。鶉さんのやっていたジャンルは何だったんですか?

 「東方Project」というゲームの二次創作で、イベントのお客さんは圧倒的に男性が多くて、男女比8対2くらい。

――それは女性が少ないから、繋がりを持つだけでモテそうですね。好きなジャンルがBLだったり、男性ファンの少ない分野だったりすると、男の子とは繋がりがなくなるのかなと思って。

 なくなりますね。実は私、高校生の頃はBLの二次創作をしてたんですけど……気付いたんです。これではモテないっていうことに。

――趣味の活動の場で、モテたかったんですか?

 なんでもいいからモテたかったですね。

そもそもサークラとは?

――高校生までは、全く恋愛関係のときめきと無縁だったと。女子校だったこともあるし、男性にウケる外見でもなく、社交的でもなかったんですね。でも高校卒業間際にダイエットをして綺麗になり、大学入学後にサークルクラッシャーとなって……それも今はご卒業されたと。鶉さん、今おいくつでしたっけ?

 24歳です。東方の同人活動を始めたのは21歳になる直前くらいでしたね。

――この本を読むと、大学入学した18歳から今日まで、猛スピードで駆け抜けた印象を受けます。サークラを始めたのは何歳で?

 19歳の終わり頃からでしたね。だから期間としては決して長くないというか、サークラ期間は2~3年くらい。

――ダイエット成功して、いきなり自信がついたんですか?

 そんなすぐには自信つかないですよ。高校までは超太ってて、そのうえ母親からも「あんたは太ってて醜い」って呪詛を吐かれて育って、自己肯定感が一切なかったんです。自分が一般的な普通の男の子に愛されるワケないという大前提のもと、生きてました。イケメンでもない、普通にそのへんを歩いているごくごく普通の男の子であっても、私のことなんて好きになるハズないだろうと思ってました。でもその一方で、痩せて普通の洋服を着られるようになったし、家にいたくないし、何かバイトとかしたいと思って、キャバクラの面接に行ったんですよ。

――いや、何でキャバクラに……? キャバクラで働くのって、ある程度、自分にの容姿に自信を持っていないと、第一歩のところを踏み出せないと思うんですが。

 太ってた高校時代、通りすがりに、男子校の生徒集団から「何あいつキモい」と聞こえるように言われたり、物を投げられたり、ワザとコーラをぶちまけられたりしたことがあるんです。超怖かった……。ところが高校卒業間際、痩せた私に、その男子校の別の生徒がラブレターを渡してきたんですよ。「嘘でしょ!?」ってすごい不思議に思ったけど、痩せたからなのかなって。でもそれで、いきなり男の子と普通に話せるわけじゃない。だから、「男の子といっぱい話す練習をできる場」「あるいは自分が女の子として認められる場」で、自尊心を育みたい! っていう流れでの、キャバクラですよ。

――なるほど。容姿に少しの自信がついたし、次のステップを踏みたいと。

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