インタビュー

男子からの「好き」を集めて自己肯定の材料にしていた。元サークルクラッシャー・鶉まどかの考えていたこと

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就活にサークラ経験が活きた

――大学へはちゃんと行っていたんですか?

 初めの一年間は、あまり行かずで全然単位が取れなくて。二年生からはこれじゃいかんと一念発起して、めちゃめちゃ大学に行くようにしました。無事に単位を全部取得して卒業して、就職活動もちゃんとやれましたね。

――学外のサークラ活動やバイトに明け暮れていたような感じですけど、大学の友達は、いたんですか?

鶉 いました。普通に男女混合のゼミも入ってましたし、オタクじゃなく、普通の友達が出来ましたね。

――そっち側で「じゃあゼミクラッシュしようかなぁ」とは思わなかったですか?

 クラッシュするための学外のサークルなら、クラッシュ後に人間関係が継続することはないから別にいいんですけど、恋愛関係のいざこざを経ても卒業までずっと一緒にいなきゃいけないゼミの仲間の関係性は、崩したくなかったですね。立場を悪くしたくないから。

――言ってみれば、クラッシュさせるために入るサークルっていうのは、鶉さんにとってすごいどうでもいい集まりなんですね。

 そうです。ワンナイトラブみたいな。

――サークラは男性から「好き」と告白されることがゴール。告白されても、鶉さんは「ありがとう」と受け流すだけで、付き合わないんですよね? セックスなんかもしない?

鶉 しないです。何でセックスをしないかっていうと、セックスをすると相手からの私に対する純粋な「好き」が歪むじゃないですか(笑)。

――歪むかな? 執着が強まる場合もあるように思いますけど。

鶉 「セックス出来ないけどめっちゃ好き」っていうのと「セックス出来るから好き」っていうのは多分、男性の中ではズレてると思うんですよ。一回してしまうと、「次に会ったときにもまたエッチ出来る女の子」って思われる。「ヤレるかヤレないか分からないけど超好き」っていう子でいたかったんです。私がサークラとして自覚していたこと、あるいは他のサークラの子たちと話してあらためて認識したのは、サークラ女子はみんな「純粋に私のことを好きって言って欲しい」という気持ちが異様に強いんです。

――セックスという付加価値なしに、自分を受け入れて欲しいんですね。

 それともうひとつ、「縛りゲーム」みたいな要素もありましたね。若い女の子が持っているセックスの価値が非常に高いとされているこの世の中で、セックスをチラつかせれば、いやセックスまでいかなくともキスとかをすれば、すぐクラッシュ対象の男の子がコロッていっちゃうのはもう目に見えてるんですよ。だから、それをしないで私の持っている他の資質、たとえば会話のやり方とかで相手の好きゲージをどれだけ上げられるかみたいな、一種のゲーム的な感じを楽しんでいるところもあったんです。「セックスはしない縛り」というルールありきで、他の技術、会話、デートに誘う、夜電話を掛ける、メールをする、そういったことを駆使して、どこまで相手の「好き」のボルテージを上げられるかっていうゲームでしたね。

――そうなんですね。鶉さんは、自分の狙った通りに「好き」と告白してくる“クラッシャられ体質”の男性たちのことを、本心ではどう思ってたんですか?

 最初は「え、バカじゃん」って思ってたんです。だって、本にも書きましたけど、初対面で「焼酎お好きなんですね」って一言声を掛けただけで後は何も喋らなかった男性が、帰りの電車でいきなり告白してきたんですよ。意味が分からないじゃないですか。でも同時に、それが先ほども言ったように嬉しくもありましたし、面白くもありました。「焼酎お好きなんですね」で、好きって言われちゃった、って。じゃあ、サークルの集まりで女性経験のまったくなさそうな男の子たちに「休みの日何してるんですか?」とか、「今度一緒に遊びに行きませんか?」って話しかけたらどうなるのかな? もっともっと「好き」を集められちゃうのかな? と。そして実際、そうなった。

――他にどんなことをすると「好きになられちゃう」んですか?

 相手の肩に、手をポンッと置くとか。そのくらいの軽いボディタッチは、すごく意識されます。飲み会でお酒飲んでて「一口貰っていい?」って言ったらもう好きになられちゃう。でもすぐに告白してくるような勇気のある人は絶対数が多くないので、何度もデートに誘ってあげて、彼らに「イケるかも」と思わせてあげる。

――いくら鶉さん自身の自己肯定感が低かったといっても、そういう人たちとそういうやり方で積極的に関わり続けることは面倒くさくならなかったんでしたか? よくそんなこと続けられるな、と思って。

 クラッシュを、ですか? クラッシュというか、そういう人たちを相手にし続けることですか?

――し続けることです。本を読んでいてすごいなって思ったのが、クラッシャられ体質の男性たちを“離乳食系男子”と命名したくだりです。サークラとしての鶉さんは、まさに赤ちゃんの相手をする保護者ぐらい、手取り足取り彼らを嬉しがらせるようなことをやってあげて、「好き」を引き出す。それに対して、鶉さんの女友達が「そんなに努力して何になるの?」みたいなことを言ったと。私も、そんなに頑張って好きじゃない男から「好き」って言われて、別に付き合わないしサークル壊れるだけで何にも残らないのに、よく出来るなあと思っていて。自己肯定感を高めたかったというけれど、好きでもない人からどんなに「好き」を集めて貯めても、そのうち虚しくなるんじゃないかな、充足感に繋がらないんじゃないかなと思って。それを今日は特に聞きたかったんです。

 私も結局、さっきも少し触れた初彼が出来たことで、サークラはすっごい虚しいっていうことに気付いたんですよね。その人と会った時に、「こうやって誰かと一対一で深い関係を築くのってすごい楽しいんだ」とわかって、これまでしてたことってそんなに楽しくなかったなってすごい思ったんです。その彼は同世代だったけどもう私はサークラ経験によって「男の子怖い!」って恐怖心を少しずつ拭えていたし、彼はサブカル系男子で物知りで、一緒に喋るのが楽しくて、食事に行ったりしても普通に楽しいんです。私がリードして手取り足取り離乳食を与えてあげなくても、すごく楽しい。「あ、普通に対等に人間と話せるってこんなにいいことなんだ」って。ただ、その彼に振られてから、また自暴自棄みたいになってサークラを始めたりもしちゃうんですけど(苦笑)。

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